2022年12月24日土曜日

君の名は?エソ編そしてスカベンジャーナマジのビンボ飯

 ちょっと気になったんだけど、「君の名は?」って題名はナマジのことだしアニメからと思ってる人も多いかもしれないけど、”君の名は?シリーズ”は実はあのアニメよりも以前からあるシリーズで昔の実写映画のほう由来ね。さすがにワシも世代じゃないけど”マチコ巻き”っていうのがなんなのかを知ってるぐらいの知識はある。アニメの方のタイトルはオマージュなんじゃないの?しらんけど。タイトルにアニメの方は「。」が付いてるのは丸かぶりはマズいからか?(いまちょっとwikiったらリスペクトしつつ作った的な書きぶりなのでオマージュで正解っぽい、実写映画はラジオドラマの映画化なのね。)

 てな関係ない枕から始まってますが、今回のお題はエソ系。釣り人には十把一絡げに”エソ”と呼ばれ”外道”扱いされてるけど、高級練り物の原料としては良く知られていてそれなりに大型化する種は数がまとまれば商品価値もある魚。ただ「WEB魚図鑑」でも「エソ科魚類は表徴形質に乏しく同定が難しい分類群のひとつである」と書かれていて、正直メッキ釣ってて釣れてくる”エソ”は総合的に判断して「アカエソ」と一応同定しているけど、ミナミアカエソじゃないとした根拠は?と聞かれればそんなモンはない。だって、測線鱗数とかもかぶってて自分の中では別種とする根拠が分からんので同種扱いでいいやと思ってるぐらいである。DNAとかみないと分からんのならワシには分からん。

 ということで、あちこちカマス探してさまよってて底ベタ狙いで食って来た写真の魚、何エソなのか?調べるにはとりあえず持ち帰るしかないなということで確保した。試したい捌き方もあったので好都合。

 こういうのは下手に先入観いれるより知識無しに原則通りに検索図鑑で選択問題を解くような作業の繰り返しで愚直に行くのが間違いがないだろうなと、いつもの中坊徹次教授編著「日本産魚類検索 全種の同定」東海大学出版会(第一版)を紐解く。
 
 さすがにエソ科なのは間違いないと思うので、エソ科のページから始めると、まずは”胸ビレの外側と内側の軟条がほぼ同長”かどうかで分かれる。持ち帰った状態だと胸ビレ破れ傘状態で分かりにくいけど、内側の軟条もそれなりに長いのは確認できる。一応胸ビレの長さと位置は同定の鍵になるという認識ではいたので、釣ったすぐの写真も押さえてあり、やっぱり胸ビレの外側内側の軟条は長さに大きな差がないようだ、差がある場合はオキエソとかの仲間に、差が無い場合はさらに選択問題が続く。

 次は”胸ビレが著しく短く、その後端は腹ビレ起部にたっしない”かどうか、で明らかに長めで起部に達するほどなので、次に続く。ちなみに短いとトカゲエソとかの仲間。

 次から3つが”色”の話で、あんまりアテになんねえ”表徴形質”なのよね。”各ヒレに褐色斑がある”かどうか、であればマダラエソ、無ければ次の”尾鰭上縁に黒色点列がある”に続いてあればクロエソ、無ければ最後の”尾鰭下縁が白か黒か”で白ければマエソで黒ければワニエソとなる。あとワニエソ雄の背ビレの先端からはミョーンと糸状のものが伸びる。

 褐色斑は無い、尾鰭上縁の黒色点列も無い。ここまでは多分大丈夫。ただ、尾鰭下縁が白か黒かというのが写真でも現物でも文字通り白黒ハッキリしない。黒くはないし白っぽく見えるっちゃみえる。ということでマエソと一応同定して「WEB魚図鑑」でマエソワニエソのいろんな個体の写真を見て比較してみると、どうも体型に違いがあるように見えてきて、マエソの方が頭部より後ろが細く、ワニエソは頭部より後ろがやや太くなる感じで、痩せぎすなマエソ、マッチョなワニエソという全体的な体型からくる印象はそこそこ同定に使えそうに思う。根拠を示せといわれてもなんとも名状しがたい特徴ではあるけど、自分の中では今回の魚はマエソで9割方同定できたと思う。青物狙ってジグ投げてる人がたまに釣ってて地域ナンバーワンのスカベンジャー(掃除屋)を目指すワシがおこぼれにあずかろうとしてるのはワニエソで、ワニエソは50センチ60センチとデカくなるのも特徴のようなので、デカいのはワニエソでいいのかも。とりあえずマエソは初物であり嬉しい。これで今まで釣った魚は260種。生涯目標300種で食用として市場に流通する魚がだいたい300種とか言われてて、約4000種からいるらしい日本近海の魚種の一割にも満たないわけだけど、それでもそこそこ魚を知ったぐらいにはなるかなと思ってる。けど、すでに釣れそうな魚はそれなりに釣ってるのでなかなか厳しくなってきてる。あと40種、一年に2種追加していって20年。70まで生きてれば届くだろうか?まあボチボチいこう。そういえばフライで”アブラビレ”のある魚って久しぶりに釣ったな。脂ビレのある魚って代表例はサケマスじゃなくてナマズ目(全てじゃないけどないけどギギやらにはあって種類数は圧倒的に多い)、カラシン科とエソ系含むヒメ目で、ついでにサケ目だとワシャ思うぞ。

 でもって、エソ料理といえば肉量豊富なワニエソでも存分に堪能した”すり身”関連が圧倒的大正義というか”それ以外はまるでダメ”というのが、これまでの評価だった。ところが、その評価を覆す捌き方を工夫して”エソ料理界”に革新をもたらした方が居て、ちょうどその動画をYoutubeで見つけたのが昨年だったんだけど、好評のようで現在まで11万回視聴とご本人さんとしては大当たりのようで、今回探したらさらなる改良版「究極のエソの捌き方」を上げておられたので、それを参考に捌いて料理させてもらった。

 やることはそんなに難しくない。手法としては手開きでマイワシとか捌くときに、背骨を手で引っ張って外すと肋骨とかの小骨も背骨にひっついて外れる、あれに近い。ただエソの白身はマイワシのように柔らかい身じゃないのでそのままだと骨離れが悪いので、そのあたりが上手く工夫されている。

(1)まずは鱗とって背ビレをハサミでジョキッと切り取る。死後硬直で固まってる魚体をグネグネとグネッって柔軟体操させておく。

(2)ひっくり返して腹ビレの後ろから包丁を入れて内臓を取る感じで頭の手前まで刃が入ったら、そこでズドンと頭を落とす。

(3)腹に続いて尾鰭まで”切れてる”ように背骨まで包丁を入れて、腸などを動画ではスプーン使って綺麗にしてたけど、爪でもなんでも良いので掻き出すようにして綺麗にしておく。

(4)ここがキモ、背中側を上にして厚みのある出刃包丁などで、筒型のエソの体がコチのような扁平になるまで叩きまくる。すると身がある程度崩れて柔らかくなり背骨と一緒に肋骨が取れやすくなる。

(5)尾鰭側の背骨をプチッと切って端を包丁で押さえつつ、身の方を既に無いけど頭の方に向かって引っ張っていくと、小骨が付いた背骨と小骨が抜けた身に分かれる。

 あとは煮るなり焼くなりご自由に。という感じで特に難しいことはなく手順も普通の3枚おろしより簡単なぐらいで、魚料理したことある人なら苦労はしないだろう。ただ、鮮度が良すぎると骨から身が離れにくくやや難しいようで、今回も朝釣ってきたのを夕方捌いたら小骨がちょくちょく背骨から外れて身に残ってしまっていた。それでも単純に塩焼きにしただけでも十分美味しく。まあ味自体は悪くないのは想像できるとおりで、”美味しい白身魚”そのものである。叩いて潰しまくったので身がグチャッとなってて食感が悪くなってしまうのではないか?と懸念したけど、加熱するとまとまる性質が強いのが関係しているのかなんなのか、そんなこともなくて食感も悪くない。小骨もほとんど取れていて気になるほどではなかった。動画では塩焼きと天ぷらでお子さんが味わってたけど、確かに天ダネとしては良いかもしれない。いずれにせよこれは釣り人なら憶えておいて損はない捌き方である。

 常々思うのは、大間のクロマグロだの氷見の寒ブリだの日本海のノドグロだの、ご大層な値段がついてる魚を、なんも分かってないようなアホのマスコミが流すゴミ情報に釣られてありがたがってるだけの”食通”って単にそういう”情報を食べてる”だけのゴッコだよな。とワシャ思うのである。対して、こういうこれまでに無かったような工夫をこらして、あんまり評価もされてなかったような魚の美味を見つけ出してくる、こういう人こそ本物の”魚通”っていうもんだろうと、敬意を覚えるところである。

 まあ、大間のクロマグロだのの”高級魚”にはそういう”値段が高い”ことそのものに意味があって需要があることも分かる。金があって贅沢感を醸し出したいのなら食えば良いし、相手にわかりやすく”もてなし”を演出するにも好適だろう。でも我々釣り人なら、そういう金さえ払えば食える程度じゃない美味を知ってるはずで、泳いでる魚に値札付いてるわけでもないのに、市場価値が高い程度のことで”高級魚が釣れた”とかありがたがるのはバカバカしくて、小骨を綺麗に処理したエソ系の旨さや、ゴンズイやらアイゴやらの捨てられる魚の意外なぐらいの美味しさ、ベラやスズメダイの類いの小味の効いてる味わい、鮮度の良いマルソウダの刺身の血の臭い、活けのまま持ち帰った淡水魚の繊細、刺身で食える鮮度の魚で作った干物の滋味、そいういったものこそ珍重すべき我ら釣り人の特権的美味なのではないかと思うのである。
 ぶっちゃけワシだいたいなに食っても「うまいうまいっ」て喜んで食うけどな。

2 件のコメント:

  1. 釣れるって全く思ってもみない場所で釣れて何事か?
    て、なった魚ですが小骨がっつり入ってるせいか案外引き強いんだって感心しました。

    まさかメバル修業で出るなんて想像出来ませんでしたし

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    1.  この魚も意外なところに居ました。ベタ底狙いとはいえ着底状態ではなかったはずですが、アカエソとか水面直下のシンペンに食ってくるぐらいで、ルア-、フライに対する出方は良くて、狙えるんなら食べ方も分かったし良い釣りモノになるかもしれません。

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