2021年7月24日土曜日

待てばジャンクの出番ありⅢ-蔵に封印されし「455MG」が今その力を解き放たれ覚醒する、かもしれない-

  フライでシーバスのために、前世紀からの遺物であったフローティングラインを破棄し、格安のフローティングのシューティングヘッドを購入したら”ブッとくて入らない”問題が生じ、なんとかバッキングラインを細いのに変えたりして無理矢理いつもの8番竿用のフライリール「ラムソンLP3」にねじ込んだというのをご報告していたところだけど、どうしても奥に巻かれたランニングラインがクリクリに巻き癖つくだろうことは避けられないだろうし、バッキング巻いたは良いけど、バッキングまでライン出されたとして、スプールがやせ細った状態で、そうなるまで走りやがった魚とやりとりせねばならんってのを想定すると、フライリールは増速無しの1:1でハンドル1回転でスプールが1回転という原始的なまでの低速機なので、正直その状況でモタクサとちょっとずつライン回収してたらあれやこれや間にあわんのと違うだろうか?とかいう懸念もコレあり。もうちょっと良い解決策はないものだろうかとアレコレ考えてみた。

 まずは、巻きたいフライラインが太くていつも使ってるラムソンに入らないんだったら、もうちっと大きいフライリールに巻けば良い。っていうのは誰でも思いつくだろう。なにせインチキフライマンのワシでも思いついた。

 ところがこれが、どうだろなと思って8番ロッドに、いつも9番で運用しているサイエンティフィックアングラーズ「システム・ツー」と10番運用のティボー「リプタイド」を付けてみると、なんちゅうか”似合わない”のである。8番は海で使うといっても軽いクラスの竿で、シイラとかカツオとか、そこそこの大きさの回遊魚とかクリスマスでボーンフィッシュとか釣るのにちょうど良い9番10番にちょうど良いリールたちがイマイチ見た目的にも気分的にも重量的にもピンとこない。単に見慣れてないからかなと、実際どのぐらい重量差があるか比べてみた。

 まずは「システム・ツー」。やっぱりなかなかに重い。どちらもフローティングライン巻いた状態で比較したけど、ラムソン225.5gに対して304.5gと1.5倍近く約80g差はそこそこ重いと言わざるをえない。システム・ツーは右端の写真のように水抜き兼軽量化のための穴が開いてない個性的な見た目なんだけど、フライリールでは一般的な、”あの穴”はちゃんと軽量化に貢献してるんだなっていう感じがする。見た目の大きさ的にはそれ程差がないけど重さは意外に差が出た。

 でもって、「ティボー」様。こちらは逆に大きさ的には口径が大きくスプールが浅溝?の”ラージアーバー”タイプでだいぶ差があるように見えるけど、どちらもライン抜いた状態で比較して、182.4gと276.0gとなって、フローティングラインはバッキング入れて40gぐらいだろうから、ティボーにライン入ってたら315g前後と予想できるのでシステム・ツーと大差ない。軽けりゃ良いってモノでもないけど穴はフライリールにおいて意外に重要なのかも。ちなみにフライリールはロッドを握った手の下に位置が来るので、スピニングや一般的なベイトリールほど”振り回す”必要はないので、多少の重さは気にしなくても良い気がするけど、その分飛距離を出していく過程での”フォルスキャスト”で竿を振る回数自体は増えるのでまあ軽ければ楽は楽。こちらもやっぱり8番にはちょっと合わん感じがする。

 こりゃ、1台軽くて糸巻き量の多い安リールでも買うかと、また要らん病気を発症しそうになって、ふと、我が家の蔵に使ってない高番手用のフライリールが1台眠ってるのを思い出した。F船長にもらった先代の8番ロッドと一緒に「ドラグがまともなのが付いてないから使えないかもだけどボロいライン巻いてあるので、リール買うまでキャスト練習でもするのに使えば良いよ」といただいて、しばらくキャスト練習して、ラムソンをJOSさんから手に入れて、以降日の目を見ることなく蔵で眠り続けていたお宝である。っていうかモノを捨てられない悪癖でずっととってあったけど、高番手に使うような大口径のフライリールでクリックブレーキしかついておらず、かつそのクリックブレーキも不調でカリカリいわないときがあったりするので、毎度、引っ越し時の整理やらで捨てようかと思うも捨てきれずに今ここにある。

 結果として、これはとっておいて良かった。このフライリールはその名をリョービ「455MG」という。特になんの変哲もない安っぽいフライリールに見えるけど、手に取るとちょっと違和感を感じるほどに軽い。なぜならこのリールは最近小型の高級スピニングとかにも使われているらしい、マグネシウム合金製で、そうとしらなければ樹脂性だと思うぐらいである。銘板にはリョービのマーク、機種名と共に「スーパーライトマグネシウム」と誇らしく表記されている。何しろ比重比べると鋳造アルミ合金は2.7、鋳造マグネシウム合金は1.8(竹中由浩著「TACKLE STUDY」参照)と、剛性がアルミの方が上なので力がかかるところとか厚くしなければならないにしても、素材としてアルミ合金の2/3の重量というのはクソ軽い。

 どのくらい軽いか、実際に測ってみると最終的にフライラインとバッキング巻いた状態で179.7gとライン抜いたラムソンと一緒ぐらい、フライライン抜いてバッキングたらふく100m以上入れた状態で140.5グラムで多分本体だけなら120gぐらいというなんじゃこりゃな軽さ。”スーパーライト”の表記は伊達じゃない。今時のフライリールでもここまでの軽さのは高番手用ではちょっと見当たらないんじゃなかろうか?樹脂性のオモチャみたいなのを使ってる人は見たことあるけど、そういうのを除いて普通にまともなアルミ削り出しとかの軽量機でもここまで軽くはないだろう。

 リールの直径自体はスプールの軸が細いにも関わらず、リプタイドとたいして差はなく、バッキングかなり巻いてやらないと、ラムソンに入りきらなかったようなゴン太フローティングライン入れてもスカスカである。左リプタイドの右455MG。

 なんちゅうか、バッキングじゃなくて浅溝化する”エコノマイザー”的な軽い部品をスプールの軸に噛ませて”なんちゃってラージアーバー”化して使っても充分なぐらいの糸巻き量である。

 でもって、なんでそこまで軽いのかというと、素材がそもそもマグネシウムで軽いって
いうのに加えて、この大きさのリールならそこそこ大きい魚を想定しているはずで、今なら当然”ディスクブレーキ”が装備されているはずだけど、455MGにはクリックブレーキしか搭載されていない。しかも通常左右切り替えとかの都合もあって2個付いてるコトが多いクリックブレーキを1個で済ましているという単純設計。余計なモノは全く付いていない潔さで軽さを稼いでいる。見てやってくださいこの清々しいほどに単純な構造を。全バラししても部品数10個以下にしかならんのと違うだろうか?

 ちなみにティボー様は、以前紹介したけどコルクの直径デッカいドラグパッドを同一軸上で締め上げる形式で、惚れ惚れするような性能のドラグになっている。ワシには分不相応なリールだとつくづく思う。ただこの方式は同一軸上に並ぶ部品が増えるのでハンドルと逆側が出っ張る形となりリールが大型化して重量も増える。ラムソン(写真左)とシステム・ツー(写真右)はスプールと同期して回る金属製の円盤の片側をギュッと押さえてブレーキを掛ける方式でこれだと本体内に部品を並列配置できるのでハンドル逆側はすっきり平面にできる。ラムソンは写真下の三角形の部分がブレーキで上の部品は”音だし”、システム・ツーは逆に上がブレーキ部品。ラムソンもシステム・ツーも実用上申し分ないドラグ性能で釣ってて困ったことはない。ティボー様のドラグ性能を必要とするような魚をワシみたいなインチキフライマンはあんまり相手にしていないってことで、やっぱり分不相応に良いリールだと思う。

 ひるがえって、クリックブレーキ1個しか付いていない455MGは実用上問題生じないのか?って考えると、まあシーバス釣る分には生じないよねって思う。手練れのフライマンである”グランドスラマー”ケン一も角のある魚とか狙うときとかは別にして「ビャァーッと走ったときにバックラッシュせんかったら上等。クリックブレーキで充分」って言ってたのでインチキフライマンのいい加減な判断というわけじゃないと思う。いつも書くけど、ぶっちゃけシーバス特別に引く魚じゃないし、なんならフライライン手でたぐってやりとりしてもイケるっちゃイケる。ワシ小マシなシーバス掛かったら一生懸命リール巻いて余分なフライライン回収してリールでやりとりするようにしてるけど、それはリールのドラグを使いたいわけじゃなくて、ワシのようなインチキフライマンのつたないライン処理では、ラインバスケットにたぐり込んだラインが絡んだりして魚走ってラインくれてやるときに困る可能性があるのでそうしてるっていう要素が大きい。唯一シーバス釣ってて良いドラグのリールだとありがたいなと思うのはこの地ならボラが掛かったとき(一般的な都市河川なら加えて大型のコイとエイ)が想定されるけど、まあ滅多に起こらないことだし、そんときゃそんときで気合い入れてスプール手で押さえる”ハンドブレーキ”も、やけどとハンドルに指ぶつけるのには気をつけつつ駆使してやりとりするべし、と割り切ろう。

 シーバス用と割り切ってしまえば、単純きわまりないこのリール、結構はまってくれそうだけど、もともとどういう需要で作られてたのか、リョービってそもそもフライリール作ってた印象もあんまりなかったので、まあこんなマイナーなリール誰も興味ないだろうから情報も出てこないだろうと思いつつもネット検索かけてみたら、なんとこの「MGシリーズ」の設計者さんのブログという濃い情報がヒットしてしまって、コレがなかなかに味わい深かったというかなんというか、自分の無知を恥じたしだいである。元々は小型の255MGというのがあって、これが1981年から15年近くも生産され続けて、欧米中心にシリーズ全体で約8万台も売れたヒット商品となり、好評に応じて455MGは途中で追加された機種のようだ。リョービが釣り具業界に参入して、得意の鋳造(ダイカスト)技術でまだ日本では馴染みのなかったフライフィッシングの世界に殴り込みをかけるにあたって、当時新人だった設計者さんもリョービも気合いを入れて当時も珍しかったはずのマグネシウム合金製で驚くほど軽いリールを作って成功を収めたようだ。255MGは知ってる人なら知ってる名作のようである。まあ中古の相場とか見てみたら3千円台とかだったけど、ぶっちゃけ道具に値段とか最新の機能とか、とくにフライリールみたいな単純な道具には要らなくて、むしろワシが求めているのは、こういう”物語性”である。455MGというなかなかに物語ってくれるリールに、今後は自分との個人的な物語を積み重ねて行きたいと思う。

 ということでイマイチ効きが悪くなってたクリックブレーキも調整して快調に整備したのでフライでシーバスよろしく頼みます。夏場はシーバスいったん終了だけど、秋になったら良い釣りしましょう。

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