2025年5月3日土曜日

春のフライリール祭り

 今年は、リールネタは年明けにメイドインジャパンのPENNネタで一発書いたッきりで”病気”は治まっていたように見えていたと思う。
 そんなこたぁない。
 冬の釣りものであるカマスが今年は春先まで連れ続いたので、釣れているときは病気の症状は治まってくれる傾向にはある。しかし、カマスも終わりかけて今期の課題やら、次のシーズンへの対策やら考え始めると、ムクムクと物欲がもたげはじめ、れいによって、マウスが滑らかにすべりはじめて、クリッククリックしてしまっていたのである。アタイ病気がにくいっ!

 そもそも、フライリールにはっていうかフライの道具にはあんまり興味がないというか、腕がソレナリでしかないので道具に対して「こうあるべき」というような確固たる好みがない。ぶっちゃけ壊れにくくてあんまり癖が強くなくて安けりゃ上等ってぐらいにしか思っていない。なのでルアー用の釣り具ほどのこだわりも無く、比較的物欲を刺激されない分野ではある。
 あるんだけど、この冬のカマス釣りでは、暗い時間の浅棚攻略で、あまり沈むのが早くないタイプⅡとかのラインでユックリ引くとかも試したし、派生していつも使ってるタイプⅥよりタイプⅣのほうがラインが軽い分食い込みが良いような気もして、ラインの種類を変えたスプールをいくつか用意する必要に迫られた。今使ってるフライリールはサイエンティフィックアングラーズ「システム2ー78M」で替えスプール2個付きで中古で安く手に入れてあるので、スペアスプール体制は比較的充実している。性能的にも全く不服はない。ただ、スプールが3つあったとしても、タイプⅥ、Ⅳ、Ⅱと用意したり、メインのタイプⅥを予備含めて2本用意してもう一種類とかで3つを使い切ると、今期終盤新しいラインの試投の際には「もう一つ二つスペスプールがあると何かとはかどるのにな」と思うところがあった。というわけで、スペアスプールを確保すべく、本体込みでも5千円も出しときゃ買えるので、中古の弾を探していたんだけど、これがなかなか出てこない。「システム2」自体は長年にわたりよく売れた機種なので、中古市場にも弾数多く出ててくる。時代によってスプールが穴あきだったり穴無しだったりと違いはあっても、同じ型番なら時代が違うモデルでも互換性はあるようで、同じの探すのぐらいわけないだろうと思ってたけど、以外に難しい。なぜなら同じライン番手指定の例えば”78”であっても、スプール幅とかの違うモデルがいくつも用意されていて、無印や「L」は比較的よく見かけるけど「78M」って以外にレアな型番で、無印と互換性あるのか分からんこともあり「システム2-78M」は本体、スプールとも出物が見当たらなかった。
左システム1-678、右コンセプト2-35
 となると、まあフライリールはスプールにハンドル付けただけみたいな単純な構造でかさばらないので、試投用に新たなラインを巻いていくのぐらいの用事であれば、新しい安いリール1台買って対応すれば良いか。ということになった。替えスプール1個持ってくのと予備リール1台持ってくのと大して変わらん。ってなったときに、ぶっちゃけカマス釣るのにシステム2の性能の良いディスクドラグとかなくて良いし、バッキングライン回収させられるほど走る魚も想定してないのでラージアーバーでなくても良い。釣りが終わったらラインを巻いて収納できればそれでいいだけである。ただ、スプールの追加とか後々のことも考えると中古弾数が多い機種が望ましく、そうなると信頼と実績のサイエンティフィックアングラーズブランドのクリックブレーキの機種である「システム1」が良いかなということで、安いの無いか探ってたら「システム1ー678」とオマケにあんま状態良くないけど同ブランドの「コンセプト2-35」もついて2500円(送料込み)というのがネットフリマに出てたので、安いしこれでいいやと確保した。

 システム1はもう、クリックブレーキのフライリールはこうです、って見本みたいな典型的な三角のクリックが2つ付いてるタイプ。この△の向きを変えると右巻と左巻が交換できる。
 システム1も2もそうだけど、イングランド製で、フライリールって数が売れないから削り出しとかが多いけど、そこはさすがのサイエンティフィックアングラーズブランドで、世界中で売れる販路持ってるから、金型作ってアルミの鋳造で作られている。鋳造で沢山売るからお値段控えめ。でもフットは丈夫なステンぽいのになってたり、造りはしっかりしてて信頼性が高い。システム2の方はしっかり機能するディスクドラグが入ってて、鋳造の比較的安い価格帯のフライリールとしてはあり得ないぐらいの仕上がり具合になっている。まあシステム1もシンプルなクリック式になってる分ブレーキ的には下級品という感じだけど、単純設計なおかげで壊れたり不具合起こしたりは少ないだろうから、これまた実用的なリールなのは使う前から分かろうというものである。ちなみにどうも同様の機種がシステム2の「LC」という名で売られていた時代もあるようでディスクドラグのが欲しいときは要注意である。CはクリックのCか?

 で、オマケで付いてきた「コンセプト2-35」がけっこう面白いリールだった。おそらく3~5番指定のリールなんだろうけど樹脂製で軽い。フライリールってスプールが塩でやられがちで、長期保管の時とかはライン抜いてとか面倒くさいんだけど、樹脂製なら腐食には強いから海用としては好適。ガタついてた巻き心地もグリス塗りまくったら気にならない程度に回復した。相当に安い感じの造りで精度もあんまり出ていないけど、軽量、高耐腐食は評価できる。
 で、これだけ安い造りのリールならクリック式で良いだろうと思うけど、なぜか主軸からギアを介して隣に持ってきたテフロンパッドの入ったドラグが奢られている。
 なんか見たことある方式だなと思ったけど、これオービスブランドの「バテンキル5/6」と一緒の方式っぽい。コンセプトはどこにも製造国の刻印とか無いけど、バテンキルもイングランド製だったと思うので、どうも英国式のように思う。製造は別の国かもだけど設計自体は英国流とみた。英国のフライリールといえばハーディーが思い起こされるけど、ハーディーやらオービスやらサイエンティフィックアングラーズやらのブランドから製造を下請けしていたフライリール屋が英国にはあるのかもしれない(ブリティッシュリール社というのが怪しい)。
 ドラグは主軸から回転持ってきた小さい歯車の両面にテフロンパッドを乗せて、リールの壁面と、キノコ型のネジ頭みたいな真鍮の部品で挟み撃ちにして、調整つまみでネジを締めて効きを調節。なんだけどイマイチ調整効かずで、バックラッシュしない程度にナットの締め方で調整しておいて、つまみは触らん方が良さげ。
 
 というわけでコンセプト2は軽量小型を活かして試投用の予備機に、システム1はリョービ「455MG」に任せていたシーバス用のフローティングラインを巻き替えしてシーバス用に回す。455MGはマグネシウム本体で軽くて良いんだけど、ある程度予想はしていたけどマグネシウムは塩に弱い。汽水とかで使った後にジャバジャバ水道水で洗ってから保管していても、ラインの間とかに入り込んだ塩気までは完全に取り切れず、スプール内側塩吹いて腐食しがちなので残念ながら塩気のある水域ではイマイチ使えん。軽さに極振りした面白いリールなのだけど残念ながら淡水仕様ってワシの中での整理。まあこの大きさのリール淡水でってなるとサケとかぐらいしかなさげで、出番なさそう。使ってみたいという方おられたらご連絡を。

 っていってるそばから、冒頭写真の右端のは”それ系”のじゃないのか?と気づかれた方はお目が高い。まさにリョービの同じマグネシウム本体のシリーズの最初に作られた機種で「255MG」という渓流とかで使うような小型機種。この機種が欧米でも大ヒットしたので、大型化した455MGとかも追加で作られたという経緯だったらしい。
 渓流なんて行きもしないのに、なんでそんな小型機買ってるのか?そもそもそういう用途ではフルーガー「メダリスト1492AK」があるやんけって話だけど、ジャンクリールとしてこの名作が800円即決(送料別)で出されてるのを目にしてしまったら、そんな値段で売られて良いリールじゃないゼって不憫に思ってしまって、マウスが滑ってクリッククリックもやむなしなのであった。ついでにこういう値段の付け方してる業者さんなら、他にも掘り出し物があるだろうから探してまとめて送料安くあげようとしてしまい、案の定900円即決(送料別)の大森製作所「タックルNo.2」なんてのを見つけてしまい、現在ベイルレス仕様にして絶好調で運用中の同型機の予備機としてこれまたクリッククリックしてしまいアタイ病気が憎いのであった。タックルNo.2の予備機なんて色違いの「タックル5No.2」持ってるから間に合ってるだろって話。

 ただ、結果的に255MGは買って良かった。そのぐらいちょっとやるなというリールで、相場見ても新品箱入りとかでなければクソ安いけど、これはもうちょっと良い値段付けてやって欲しい。
 正直、8番とかだとロッドもリールも多少重くても、そもそも投げてるラインが重いので、あんまり軽さの恩恵は感じてないんだけど、さすがに渓流用ぐらいのサイズになってくると、軽さを楽しめるように思う。
 マグネシウムボディーは鋳造でもあからさまに軽い。
 で、その軽さの要因としては単純な構造も寄与していると思うんだけど、単純な中にも工夫が凝らされていて、ちょっと感心する。
 元々他のメーカーの事例があって真似したのか、自社開発なのかフライリールについては知識があまりなくて分からんのだけど、まずはブレーキがちょっと変わってて良い。単純なクリック方式かと思いきや、回してもカリカリいわないので「外れてるのか?」と不安になるけど、カリカリとクリック音がする方式ではない。ないんだけど、方式としてはクリック方式同様単純で、クリック方式だと、スプールの根元の歯車に爪を掛けるんだけど、255MGでは写真のようにスプール根元には歯車じゃなくて円盤がハマってて、その円盤にクリックの△の先を沿うように円弧状に伸ばした金具で円盤を押さえる方式になってる。ブレーキの摘まみを締めると円盤に強めに金具が押しつけられてブレーキが掛かる仕組み。とはいえこの単純な構造でディスクブレーキみたいな安定した強いブレーキ力が得られたら苦労しないって話で、そこまで優れたブレーキにはなっていない。でも、この大きさのフライリールのブレーキに求められるものって、ラインを引き出したときに過回転してしまってバックラッシュしなければ上出来で、リールファイトなど想定しなくて良いので、このブレーキでユルッと押さえておけば用が足りる。カリカリ音がしないのは静かに釣るには悪くない。なにより個性的。どうしてもリールファイトの必要性が生じたらアウトスプールなのでスプールを手で押さえてブレーキかけろって話で必要充分だろうと思う。
 もいっちょ、芸が細かいのがラインがあたるリールの脚部と逆の柱の前後にパイプ状のローラーがハマってて、ラインを出し入れするときに傷つけないように配慮されている。単純だけどちょっとやる感じなのである。
 マグネシウム鋳造で軽量安価、機構も単純ながら個性的で大ヒットになったのも頷ける感じだけど、いかんせんリョービってブランド力が弱い感じで、リョービのフライリールっていっても中古市場でも需要が少ない。でもこれは買って損はないと思う。フライリールって、特にこの大きさは単純な構造だから「どれ買っても一緒」となりがちだけど、255MGはちょっと違うと思う。この手のフライリールなんて何でも良いんだろうけど、だからこそ持ち主のセンスが表れると思う。でも金掛けてもせいぜい骨董的な価値があるのぐらいしか他と差別化できるネタがなさげだけど、これはちょっと個性的で良いんじゃないでしょうか。リョービはなにげにリール造るの上手かったと思うけど、往事から評価は高くなくて他のブランドからの下請け仕事が多かった。そういう実力はあるけど、知る人ぞ知るなリールはちょっと良い気がする。このリールで魚釣りたくなったので、アユの時期になったら、今年は毛針流しじゃなくてフライで狙ってみようかなどとも考えている。アユの遡上しだいだけど、アユが居なくてもウグイちゃんやカワムツは相手してくれるだろう。

 という感じで、フライリールもそれなりフライマンとしては、たまにはお勉強しておかねばなと思うのでありました。

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