2023年2月4日土曜日

ガシャーン!!って昭和ロボ感がそこはかとなく

  気にはなってたけど、手を出さずにきていたものに、大森のアウトスプールでも”外蹴りアウトスプールマイクロセブン”以前のアウトスプール中大型機があって、独特の外付け方式のベールスプリングの収まったシリンダー的部品とかが特徴的で、気にはなっていたけど、大森1300サイズは4桁PENNだと5500SSぐらいの中型機で使いみちも想定されず、かといって人気があるわけじゃなしで、買ったところで売るのに困る不良在庫化必至のしろものなので、まあ手を出すまでもないかと思ってたんだけど、ここのところ”デカ大森”を立て続けにいじってきて、勢いがついてしまい、売れはせんけど買うときもたいして金かからん、という割り切りもあって、またついマウスが滑ってクリッククリック。開始価格の1200円落札でプラス送料870円は立派なゴミスピ価格。その名は「ダイヤモンドスーパー1300V」。

 さて、我が家に来てみるとわりとボロ目の個体でいきなりハンドルのノブをクルッと反転させて収納するのが固着している。これはいきなり分解清掃ではなくて、スプール、ハンドル外した上でネジだの隙間だのにCRC666を吹き付けた後ビニール袋につめてしばし漬け置き、が必要だなとなって、その後の作業とあいなった。
 CRC漬けにして数日放置の後、分解清掃に入ると、残念ながらハンドルノブをクルッと本体側に回すためのネジは緩まずで残念な結果だったけど、その他は問題なくネジも外せて一安心。

 スプールから古いラインを引っぺがすと、下から真ん中が盛り上がった形状の樹脂製の”エコノマイザー”的な部品が出てきて面白かった。外せそうで微妙に外せず、壊しても馬鹿臭いのでそのまま放置。深溝を浅溝化するのはこの方式でそんなに支障ないと思っている。一つのリールにいろんな仕事させようとすると、細糸だと下巻きが面倒だったりするけどエコノマイザー方式なら楽で良い。でも今時のメーカーは浅溝スプールが交換用にあるどころか、浅溝専用機種を買わせてくる方針のようで胸くそ悪い。騙されてそんなクソリール買わんで欲しいと思う。互換性のある浅溝スプールがあれば良しだし、エコノマイザーなら貧乏人にはなおありがたい。まあエコノマイザーは自分でコルク削ったりして作れるけどな。

 でもって、分解していくともうこの時代だと、ザ大森方式っていう感じで、ドラグはフェルト製3階建て。一枚耳付きワッシャーが多いのは、スプールのドラグ穴の底が平面じゃなく軽量化のために柱が入ってるような構造なのでドラグ穴の底の代わりにスプールに固定の座面として入れられている。
 真ん中の脚付きの本体フレームはれいによって左右両用で、ネジ2個でしっかり止める方式のオシュレーションスライダーが、左巻き仕様本体左側のハンドル軸ギアの上のカラーの填まった突起でハンドル一回転で1回上下する単純方式。オシュレーションスライダーを填めるのに、本体フレームにオシュレーションスライダーを主軸に刺して先に固定してから、ハンドル軸のギアを入れた本体左側をギア上の突起がオシュレーションスライダーの溝に入るように填めてソッ閉じ、というのが順序だと思ってたけど、この機種だけか、インスプールマイクロセブンとかでも実はそうなのか、先にハンドル軸のギアを填めた本体左側と、本体フレームを合体させてから、縦にしたオシュレーションスライダーをギア上の突起に合わせて隙間からギア上に置いて、クリッと90度回転して収まるべき位置に収めてから上から主軸をブッ刺して固定というのが問題なくできた。この方が何かとやりやすい。
 ラインローラーは真鍮製のブッシュ入りで回転式。特に固着もなく普通に回ってた。
 ギアは大森得意のハイポイドフェースギア。別に気になるほどのギアゴロ感もなく充分スムーズ。逆転防止はハンドル軸のギア裏にかける方式。ローター軸のギアにベアリングが一つ入ってるのもあってか巻きは充分軽い。

 でもって、この機種の最大のみどころである、ローター外側ベールアーム下部に鎮座いたしますグルグルバネの入ったシリンダー。隙間から見せてる部分は一部で実際にはシリンダーの長さいっぱい使ってバネを収めてあるので、ベールを起こしたり返したりするベールスプリングの耐久性的には。今時の真ん中に心棒があってグルグルバネ方式、もしくは溝にはまったグルグルバネ方式と比べても遜色ないものだろうと思う。
 グルグルバネ方式は長らく特許の関係でスピニングリールに採用できなかったと聞くが、このシリンダー方式は特許的には大丈夫だったのだろうか?微妙な線のような気がするけどあまり気にしないでおこう。

 小型機に乗せるようなあんまり小さいシリンダーは難しそうだし、ローター外側に可動部が露出してしまってるのは、ラインが噛んだら一発裁断されてしまいそうな不安もあるけど、耐久性については後年大森製作所も採用していた2巻きか3巻きしかないトーションバネ方式(安全ピン開いたような形のバネ)より間違いなく長寿命で、通常5巻き前後と巻きが多かったインスプールスピニングのベールスプリングよりも長持ちするだろうことは明白。

 仕組み自体は難しくはなくて、ばねが押し縮められて入っているシリンダーが、シリンダーの根元からみて中央から右にベールアーム側の接続部があれば、右に押しあげてベールアームは戻った状態に固定される。手で中央を越えてベールアームを開いてやると、中央から左に接続部が行った時点で今度は左に押あげるので、ベールが返った状態で固定される。やってることは一般的な手でベールを返すことができるアウトスプールスピニングのベールスプリングと一緒。外蹴りでそれなりに作動時重い感じはあるけど、ガシャーンってシリンダーが縮んで伸びるのは、なんとなくメカメカしくて良いのです。

 ハンドル収納時のノブの反転だけ固着してるけど、他は分解清掃できて実釣可能な感じに仕上がりつつあるんだけど、塩水使用で塗装が剥げて腐蝕しているスプールエッジが、さすがに投げるときにラインを痛めかねないし飛距離もおちるだろうということで、スプール主軸に刺してドリルで回しつつサンドペーパーで腐蝕の凸凹をならして、そうすると剥き出しになったアルミは腐蝕に弱そうなので、気休めかもだけど上にエポキシを塗ってコーティングしておいた。

 いつものように青グリス盛り盛りで整備終了。左右兼用の本体フレームにハンドル側にギア、反対側に蓋という大森好きにはお馴染みの構造からいって、マイクロセブンDXと同時代1960年代真ん中へんの設計なのだろうと思う。投げ釣り用でよく売れたのか、同様の設計で「デラックス1300」「スーパー1300」「スーパー1300QS」「1300SSS」とかの1300系のほかにもファミリアというシリーズもネットオークションとかで散見される。この時代になるとだいぶ洗練されてきてる印象で、部品数も少なめで単純な整備性の良い設計だし、真鍮スリーブ入りラインローラー、滑らかで丈夫な綱系軸入り大森製ハイポイドフェースギア、ネジ込み式ハンドル、耐久性の高いベールスプリングのシリンダー方式にドラグはフェルトパッドの3階建て方式と実釣に持ち出してもある程度使えることは想像に難くない。兄弟機の多さから言っても、大森製作所を代表するようなリールの一つだろうなと感じたところ。
 ただ、いかんせん投げ釣り用のリールということで、冒頭でもボヤいたけど中古リール市場ではあまり需要が無く、そのくせ玉は少なくないのでいきおい値段は安い。買うには嬉しいけど売れんがなこんなモン。
 ラインローラーがブッシュも入った回転式ならPEラインでも行けそうに思うので、ドラグがフェルトパッドのままでいけるかどうかは試験してみないと分からんけど、青物狙いとかに持ち出しても案外使えてしまいそうな気がする。ギア比も4:1ぐらいとそれほど遅くはない(4桁PENNの5500ssで4.6:1)。

 売れぬなら使ってしまおうホトトギス。という気がちょっとしてます。

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