2025年8月16日土曜日

PENN「ジグマスター500」「No.9ピアレス」は現行機種です

 従来型PENN両軸機も実釣用の機種は既にそろってきていて、とりあえず小型機種とかで購入候補だったのは概ね買えたし、一部値段が付く機種は安い出物があったら考えるかなという状態。ってなかで「ジグマスター500」と「No.9ピアレス」2台のセットがネットオークションに出てきた。ピアレスは平行巻機構(レベルワインダー)ありの小型機で欲しかったけど、意外に安くないようなので諦めていたけど、開始価格が安かったのでダメ元で入札してみた。ジグマスター500のほうはギア比5:1のハイスピード版の505HSは2台既にあるけど、ハイスピード版だとマグナムディープクランクベイトを巻くのにはちと巻きが重いので、ギア比3.3:1の140スクイダーでも良いけどジグマスタ-500はもうちょい高速でギア比4:1なのでそちらでもイケそうに思って、あれば比較検討できるので悪くないだろう。でもでもピアレス単体でも3000円ぐらいしていることが多く、高いと5000円以上していたりもするので、落とせないだろうなと思ってたけど、いつもの「2220円」ぴったりで落札。おそらく競合者はこちらが2200円入札と読んで2210円で刻んできたんだろうけど、それでもダメだったので「デカい金額入れてるな」と予想して芋引いてくれたんだろう。してやったりな気分。今回、ゼリー飲料の箱に新聞紙緩衝材と、わりと雑い簡易包装で配送されてきたけど、PENN両軸機壊れるようなタマじゃないので問題なし。

 で、いつものように分解整備。ジグマスター500からやっていく。やっていくんだけどコイツ、長~いパワーハンドルが付いていて、現物来る前に写真でも「パワハン付いてるな」ぐらいには思っていたけど、実物手にするとやたら長い。PENN純正パワハンの一番長いやつのようだ。上の写真左がジグマスター500で右が比較に普通の長さのハンドルが付いているロングビーチ60。長くて邪魔なぐらい長い。ハンドルの長さって手首でクリクリ回転させることができる範囲であればそれほど巻くスピードが遅くなりはしないけど、このぐらい長いと肘使って回してやる必要があり、巻く速度が落ちる。ハイスピードのギアを搭載しておきながら、巻きを軽くするためにハンドル長くして、ギア比を相殺するような組み合わせにして結果巻き取り速度を”普通”にしてしまったら元の木阿弥で意味ねえだろ?って思う。だったら最初っから低ギア比の巻きが軽い機種で巻いておけって話だと思う。本来こういうのの需要って、船で竿掛けに固定した竿とリールでゴリ巻きするときに、通常の長さのハンドルでは重くて巻き取りにくい時とかが出番ではないのだろうか?少なくともジグとか投げて素早く巻きたい時には向かない仕様だと思う。なので、ハンドルは出番なさそうでかつ、元々低速機で2.5:1のロングビーチ60のと交換して、長ハンドル装備のロングビーチは超ゴリ巻きウィンチ仕様ってことにしておこう。この仕様ならゴリゴリ巻いてくるだけで多少の”重い”魚でも寄ってくるだろう。逆にノーマルハンドルの500に限らず高速機で”重くて巻けん”ってなったらどうするか?そんなもん別に両軸はゴリ巻き”しなければならない”ってわけじゃないので、ポンピングして竿で稼いだ分巻いてやれば何の問題もないはず。船縁でもピトンで磯に突き刺したとかの場合でも竿掛けに道具を固定したままゴリ巻きするのが前提なら重くて巻けない問題は生じかねないけど、手持ちでせいぜいジンバルぐらいしか使わないのならポンピングしない理由はなく、それほど困りはしない。PENN両軸機のハンドルには純正品から社外品から色々あって、ドラグを完全に止めてしまって、やばくなったら放出できる”ハンドルドラグ”とか力こそパワーなマッチョ仕様のものから、ハンドルが折りたたみナイフみたいにたたんで長さを変えられて、早く巻きたいときは短くしておいて、パワーが必要なときは伸ばして使うというのがあったり、なかなかに面白い。後者はあまり丈夫なモノにはならないだろうから中小型機用だろうけど”2スピード”をギア比ではなくハンドル長で実現していて鋭い。

 500も”テイクアパーツ”機構で、本体側はネジ一つ緩めてグリッとねじるとパカッと外れる。505HSでは真鍮が多かったけど、500はステンの部品が目立つ。クラッチを下げるのに引っ張る方式が採用されているのとかは505HSと同様、逆転防止の爪がギアの乗ってるプレートに付いてて填めやすいのも一緒。メインギアが大きくて本体枠いっぱい使ってるのも一緒。順番的には505HSに500の仕様が引き継がれているんだろう。 

 ちょっと変わってたのがドラグ。構造自体は3階建てでメインギアに入ってて一緒なんだけど、パッドの素材がメインギア下の座面には表面に小さなへこみを付けたアルミっぽい金属板、ドラグパッドにはベークライトのような堅い樹脂素材でグラスとかカーボンの繊維を固めたような謎素材が使われている。これ三桁スピンフィッシャーの「650ss」のスプールから出てきたこともあって、PENNのドラグパッドが天然素材でバラツキやら経年劣化がある革から、HT-100カーボンワッシャーに変遷していく途中に一時的に採用していた素材のようだと考えている。あと、505HSとの違いとしては、505HSにはボールベアリングが奢られていたけど、500に関しては金属製(真鍮かな)のスリーブというかベアリングでスプールの軸両端は支持されている。っていう細かな違いはあるけど、基本的には500の高速化版が505HSなので設計は似通っている。ハンドルはロングビーチから普通のを持ってきて分解整備いっちょあがり。青物限定で早引きするなら505HS一択だろうけど、マグナムクランクもついでに巻いちゃおうって時に、500かスクイダー140にするか、練習がてら試投を重ねて検討してみよう。

 でもう一台の「No.9ピアレス」。これは275ヤード/15ポンドという可愛らしい機種で、16ポンドラインとかでルアー投げる釣りにはちょうど良い大きさかなと。PENN公式の糸巻き量表示において、意外に重要なのがラインの太さだというのが色々試し投げしていて分かってきた。だいたいその太さに合わせて全体のバランスが調整されているようで、まあ竿も投げる”オモリ”も関係してくるとは思うけど、ラインは想定されている太さのを使ったときが実力を発揮させやすいというか使いやすいように感じたところである。具体的には145スクイダーに16ポンドナイロン巻いてジグマスター505HSに30ポンドナイロン巻いて試投していて感じたんだけど、ジグマスター505HSは想定されているのが30LBで、巻いたラインと一致していて、この組み合わせで重めの2オンスぐらいのジグをぶん投げると、スプールの回転によるラインの放出スピードと実際にジグが飛んでいく速度が釣り合ってる感じで、スプールのフランジを押さえるサミングは着水時ぐらいに必要なだけで、難しくもなんともなく投げられてしまって拍子抜けなぐらいである。一方、1オンスぐらいの軽いジグを投げることを想定しているスクイダー145はラインは20LB想定なんだけど、ライン細いほうが飛距離出るだろう、って想定より細めの16LBを巻いて投げたら、フランジ押さえるサミングでだいぶ投げられるようにはなったけど、どうにも投げるときに初速が上がりすぎて回転しすぎ、ライン放出速度が上がりすぎ、初っぱなからサミング積極的にかけていかないとバックラッシュしまくった。結局初速を落としてユックリ目に竿を振って調整したけど、おそらくドンピシャの全体構成になってないんだろうと思う。というなかで、15LB想定のNo.9ピアレスはいま根魚クランクで使ってるラインが16LBナイロンなのでちょうど良い機種だと考えて確保対象としていたところである。

 で、No.9に関しては、従来型PENN両軸機では初めて手にする305レベルラインみたいな半分逆ひねり棒方式じゃない、より一般的なラインガイドがスプールの回転と連動式のレベルワインド(平行巻機構)搭載機種(レベルマチックは除く)ということで、早く投げてみたくて分解整備するより先に試投に持ち出した。27モノフィルのマグブレーキ化のときに書いたけど、連動式のレベルワインダーは遠心ブレーキ的に効くっていう理屈を、実際にそうなのか試して実感してみたかった。スプール回転からコグホイールを介して”ウオームシャフト”が回ってラインガイドは左右にラインを導いていく。ということはその、コグホイール、ウォームシャフトあたりに働く摩擦を重めにしてやればブレーキ力は上がるはずである。ということで、堅めのPENNグリスを盛り気味に盛って抵抗を上げて試投してみた。結果、普通に遠心ブレーキ機種みたいに投げられた。やはりリールは理屈どおりに機能する機械である。ベアリング沢山ぶち込んだからといってワケの分からんフォースがいきなり発生したりするわけがない。あたりまえ体操。コイツはボールベアリング無しだけどそれなりに重さのあるルアー投げるのなら上出来の性能だろう。でも、じゃあこれ投げやすいから27モノフィルの代わりに使うかっていうと、使わないだろう。普通にレベルワインド搭載機種なら今使ってるABUライト系で良いだろうし、レベルワインド無しで単純な分、壊れる箇所が減り整備が楽になるのが利点でもあるので、従来型PENN両軸機の15ポンドラインを想定した小型機でどれを使うかとなったら27モノフィルや180ベイマスターのほうが、今のワシの釣りや嗜好には向いている気がする。むしろNo.9ピアレスを使うなら、クラッチが手動式な他は普通にルアー投げるのに使う他のベイトキャスティングリールと似たような感じなので、バス釣りとかに使ったら、道具が他者とかぶることが少なくて良いかもしれない。バス釣りはそれこそケンタッキースタイルのダイレクトリールの愛好家も居るぐらいで、単純な道具で遊ぶ余地はあると思う。その中でも東海岸というかニューヨークスタイルなPENN両軸でとなると、レベルマチックはそれなりにファンもいるだろうけど、No.9ピアレスは盲点ではないだろうか?ラインガイドが径の大きなスプールに合わせて上下広いものになっていて、それを支えるピラーも間隔が広く、通常の従来型PENN両軸機では前に2本、後ろに2本のピラーがあって、後ろの2本の上にくるピラーがサミングの邪魔だというのは以前書いたところだけど、No.9ピアレスでは前が上下に間隔広い2本、後ろは1本の3角形な感じで本体と側板を固定している。その結果後ろの1本のピラーの位置は低くてサミングする指を邪魔しにくくなっているのも、ルアーキャスティングには好適かと。

 ということで、とりあえず確保したけど、すぐには使いどころはないかもしれんので分解整備して蔵に眠らせておこう。

 分解していくと、レベルワインダーの分は確実にややこしくなっているけど、その他はTHE従来型PENN両軸機という感じで、ギア回りも見慣れた構造。ドラグもこの個体の時代は伝統の革パッド。革パッドは生きてたので脱脂の後、グリス塗り塗りで仕上げ、メインギアの下の赤ファイバーワッシャーはポリアセタール樹脂製に換装も手慣れた作業になってきた。

 レベルワインダーの仕組み自体は、丸アブとかのスプール連動式とそうは変わらない。スプールの回転をコグホイール(白い樹脂の歯車)で拾ってウォームシャフト(グルグル棒)を回している。ただ、丸アブとかだとウォームシャフトを囲った筒ごとラインガイドを貫通しているけど、本機においては、ラインガイドはウォームシャフト自体は貫通しているけど、ウォームシャフトの覆いは貫通していないので、覆いは下が広く開いていて、その開いている下からラインガイドの針金部分がミニョーンと伸びてきている構造になっている。 

 でもまあ、面倒くさいってほどの機構でもなくサクサク分解整備していくんだけど、なんか謎のネジが側板側にハマっている。左が分解前の側板の状態で、下の2本のネジはフットを止めるもの、その他の3角形の頂点に存在するような小さいネジは、ピラーを固定するネジ。真ん中のでかいのはスプール軸がハマるベアリングの摘まみ。その上は音だしのスライドボタン。左端の大きめのネジはレベルワインダーを留めるネジ。その上というか斜め左に付いているネジが、裏面に貫通してなくて何をしているのか分からんネジ。よく見ると周りに「SPARE PAWL」となっていて、なんの予備が入ってるんだ?と開けてみたら、中にグルグル棒に刺さる三日月状の角が生えている部品が入ってた。一つ上の写真の真ん中上に囲んだところで刺さってる場所が分かると思うけど、ラインガイドを下から留めるネジの中に入ってて、グルグル棒に切られた溝に沿って左右にラインガイドを動かすための部品だけど、この部品ステンでも錆びるときは錆びます。塩水かぶって浸水しやすいレベルワインダーの中でも、塩が入ると溜まって出ていかない場所なので、当然整備の際には気をつけて塩抜きするけど、油断してると錆びる。ワシ「インターナショナル975」で一回錆びさせてしまった前科がある。その当時はミスティックリールパーツ社の前身であるスッコッツアンドベイトカンパニーで部品の通販可能だったので、お取り寄せして事なきを得て、ついでに予備も確保したけど、ここが錆びるってのを分かってて予備が入ってるってのは親切。まあ錆びないようにしてくれると一番良いけど、次善の策であり良心的だと思う。

 レベルワインダーはこの大きさの機種だと、まあなくても良いかなという程度の機能だけど、あっても左の全バラ時点での写真で右下のカップ1つ分に治まっている程度の部品数ではある。スプールの幅がもっと大きくなってくると、多少ラインの巻かれかたに偏りも出て気になるといえば気になるので、あれば良い気もするけど、幅広いとラインがラインガイドにきつい角度であたりかねず強度的な不安も出てくるのでその辺は判断難しいところ。いずれのせよコイツは組み上げて手にしてクリクリ回してみると、なんとも手に収まりの良い可愛い機種である。 

 で、お題にも書いたように、今回の2機種はまだカタログに載ってる現行機種なのである。従来型PENN両軸機でクラシカルな機種では他にセネターも生き残っている。いずれも、ハンドルがソフトノブのT字型に変わったり、セネターはフレームが一体型になったりとアップデートされていたりとかもあるけど、No.9ピアレスで1942年登場、ジグマスター500は1958年登場、セネター登場にいたっては1936年に遡るというぐらいに、改良は加えつつも時を超えて愛され続けている古強者どもである。ひとえにそれは単純な設計ゆえの整備性の良さトラブルの少なさ堅牢さ、単純な設計ではあるけど、その中に必要十分な魚釣りの道具としての機能を落とし込んだ、基本設計の確かさがあったからだと思っている。要するに、魚釣ってて釣り人が「コレで充分」って納得できる性能があったから、ここまでの超ロングセラーになっているんだろうと思う。現在ジグマスター500については遊漁船の船長が貸し出し用として使ってるパターンが多いそうで、単純でイラン機能はなく壊れるところが少なく丈夫で整備性が良いうえに、お客さんは落として巻く簡単な仕事をすれば良いだけで、その作業を問題なく確実にできるだけの機能を有している。平行巻機構がないのは、糸巻き量少なめにして多少偏って巻いても大丈夫な感じで運用するのがプロのキャプテンたちのお約束だそうだ。

 ワシまだ、従来型PENN両軸機の本領を発揮させるような釣りにはなっていないけど、習熟して細かいところを詰めていけば、世界中の釣り人が何十年って愛してきたこれらのリールの実力を思い知るような釣りができるのではないかと、以前にも書いたかもだけど妄想しているところである。

2 件のコメント:

  1. ジグマスターHS、乗り合い船に魅力的なんですよね
    ハンドルノブをバトミントンのラケットテープとワインのコルクで弄ればバーチカルでジャカジャカするの都合良いですし値段も安いですから、
    オフショアジギングで両軸最大の泣き所、
    スペアスプール活用が出来ないってのに対応する為にHSのナローバージョン物色しています。
    常にカリカリ鳴らすのは乗り合い船では問題行為ですが、
    代打や中継ぎ投手みたいな感覚で
    短時間なら問題ないですから。
    とある石鯛師のブログ記事でジグマスター絶賛、
    シマノやABUに浮気しても結局PENNに戻ってしまうとかありました。


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    1.  完成度高いから、後から出した他社競合品とかはイラン機能とかしか追加することがないから、結局PENNで良いってなるんでしょうね。ABUの7000cは良いリールだと思いますが、フルメタルなのでクソ重い。PENN両軸は重いと言っても樹脂主体に金属枠で強化してるのでABUに比べると軽いと思います。あと石鯛釣るのにオートでクラッチつながる機能とかいらんだろうからその分の単純設計も良いのかも。
       ジグマスター始めサーフリール系のナローバージョンは正規輸入無かったのか意外に出てきませんね。円が安くなる前ならイーベイあたりで確保できたけど、ドルで買い物するのはだいぶきつくなりました。500サイズならHS含め国内中古市場でも簡単に手に入るんですけどね。

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