ルアー図鑑うすしお味第3弾。
そろそろちょっと塩味効かせて、海用のポッパー、ペンシルです。

現在、GT用のルアーの多くが木製で、中心にステンレス線なりステンレスの棒で組んだリグなりが貫通していて、フロントフックは下から穴を開けて貫通しているステンレス線などにスイベルを通す形で接続しリアフックも含めフックにかかる引っ張り強度に対して、かなり丈夫なつくりになっています。
こういう作り方のルアーの源流を遡っていくと、どうも米国東海岸あたりにたどり着けそうです。
その東海岸のルアーメーカーの代表格が「ギブス」でございます。
まあ、古いGT野郎の皆さんにはお馴染みかと思いますが、今時の人はあんまり知らないでしょう。
ということで、あんまり書いてる人いないだろなと思いつつギブス関係検索かけてみたら、結構詳しく書いている人がいたので「どんな人だろ」と思ったら、知り合いでしたというオチ。釣りの世界は世間が狭い。
昔、Sスイにいて今は実家の方で釣具屋の店長さんをしているYさんで、私がGT釣り始めるときに道具やらいろいろ教えてもらった人なので、当然同じルアーに思い入れあるわけだ。
でも正直私がGT戦線に突撃していった20年ほど前にはギブスは既に一線をひいた感じがしていて、フィッシャーマンのポッパーとかが高いのでボックスの増量剤として買っていたように記憶している。
まあそういう2軍ルアーなので魚はあんまり釣っていないけど、投げてないので切られず残っていたりして、わりと笑える数が残っている。
代表選手はカップが斜めに切られているポッパーの「ポラリス」。

消耗が激しい(と期待していくが一発も出ないので結局消耗しない)ショアからとかサメ狙いとかの時には高いルアーもったいないので今でも用意していきます。


次に早引き系ペンシルの「ギブスペンシル」。
どっかで書いたけど、こいつと、またそのうち書くであろうヨーズリサーフェスクルーザーが、ロングペンが登場するまではペンシル2大巨頭だったはず。確か3-1/2OZと2OZがあって大きい方で20センチぐらい。
息とめて短距離走ぐらいのつもりで左手高速回転させて早引きで使ってました。早ければ早いほど釣れると信じられていました。
スイマータイプのポッパーやメタルジグでもとにかく「早引き」というのが我々世代の塩水系釣り師の記憶にすり込まれていて、今でも釣れないと「スピード足りんのとちゃうか?」と不安になって早引きして、今時のスロージャークな釣り人に鼻で笑われたりしております。
でも、たまに早引き効いたりするのでなかなか止められない習性。
とまあ、ここまでは古くからのGT野郎の家の道具箱の隅あたりをつつくと転がっているだろうと思いますが、「ギブススイマー」はわりとマイナーかなと。

何でこんなもんを持っているのかというと、けっこう真面目にロシアとかの2m級のイトウの仲間(タイメンと限定しない意味が分かる人には分かるかな?)を釣るときどうするか?というのを考えて、とにかくサーモンロッドとかでは苦戦必至なので、最初っからキャスティングタックルで一番パワーのあるGTロッドで狙っちまえばそこまで苦戦しないだろうというアホなことを考えておりました。
そうするとGTタックルでPEライン使用だと、普通のエイト管とかでフックがぶら下がっているミノーはたやすくぶっ壊れるというのを聞いていて、当時ワイヤー貫通構造のGTロッドでキャスト可能なミノーなんてタックルハウスのソルティアミノーぐらいしか無かったので、他にないかなと調べたらギブスからミノーとは言い難いけど、こういうのがあると聞いて試しに買った物です。
結局、2mオーバーのイトウの仲間を狙いに行く機会もなく、最近では丈夫なミノーも各種あったりして「蔵」の肥やしと化していますが、久しぶりに蔵から出してみました。
こういう、日本ではGTルアーとして使われていた異常なぐらい丈夫なデカいルアーがなぜ米国東海岸で作られたのか、日本にいるとあまり想像できないかもしれません。
GTで使うようなサイズのトップのプラグって何に向かって投げていたのか、東海岸は大西洋に面しているので太平洋とインド洋の魚であるロウニンアジいません。ジャッククレバルという似たようなヒラアジ系の魚がいますが南の方にしかいないし、「ジャックと名前につくのはいい加減な扱いを受けている魚の法則」からいっても、あっちの釣りの本とか見ても、それほど狙われていないように思います。
実は、こういう東海岸メイドのデカルアーはストライパーに向かって投げることを目的につくられたのです。と断言。あとブルーフィッシュも狙ってたかも。
ストライパー(ストライプドバス)は、それ用のルアーであるボーマーロングAのおっきいのとかがシーバスミノーとして日本では認識されているし、写真見てもシーバスっぽいしシマズズキなんて呼ばれたりもするので日本人だとスズキの親戚のイメージで見ているかと思いますが、割とスズキとは遠目の関係で、川でも海でもやっていける生態が似ているので姿形が似ているだけで他人の空似的な別物です。スズキは海で産卵しますがストライパーは河川に遡上して産卵して、陸封型とかもいるというのを知ると、別の系統の魚だなと思えてきます。スズキ目ではありますが、その下の科が既に違うので、タイとスズキぐらいに違います。モロネ科の魚。
で、日本のスズキのイメージでみているとびっくりするのがそのサイズ。ストライパーは30キロ超えるような大型が知られており、昔トライリーンの公告にガタイの良い白人のオッちゃんがエラに両手突っ込んで顔まで持ち上げてやっとシッポが地面を切ってるような写真があって、長さもすごいけど顔がオッちゃんの顔以上にデカいド迫力でたまげた記憶があります。
開高先生がニューヨーク郊外だかコッド岬だかでストライパー狙う話を書いてたけど、その時にルアーというより「ボーリングのピン」みたいなものをサーフで延々投げてスカ食ったとかなんとか。まさに、ギブスポラリスとか木製でくびれもあってボーリングピンぽいので、このあたりを投げてたんだろうなと想像しています。
30キロとかが首振ったら、ヤワなリグはぶっ飛びます。メーターぐらいまでならロングAやらレッドフィンやらの20センチとかでもいけるかもですが、それ以上はワイヤー貫通構造の出番なのでしょう。
大型ストライパー用のポッパーとして、ワイヤー貫通構造の物はいろいろつくられていたようで、いくつか小さめのはシイラ用とかで買ったのが蔵に残っていたりするので紹介してみる。

老舗クリークチャブのその名も「ストライパーストライク」は、元々は木製だった臭いけど、私が買ったころには既にプラスチック化していてスローシンキング。でもリグはエイト管ではなく丈夫な貫通式を踏襲。クリークチャブと言えばラージマウスバスの世界記録がこの社のウイグルフィッシュ(別のルアーだった説もあるようだが)で出ているが、たしかこのルアーでもストライパーのラインクラス別世界記録が出てたと記憶している。

名前忘れました、こいつもアーボガストで貫通式です。JOSさんに、もうGTルアー使わんから、ということでギブスやらと一緒にもらったような記憶があって、「釣れるんですかコレ?」と失礼なこと聞いたら、「それ以前に波がある海上ではイマイチペラが回らん」とか言ってたように記憶してます。ボディーを貫通するワイヤーの前後にペラ付けてねじって処理している強引さがアメリカン。
これもひょっとしたらそうかも。
コットンコーデルのペンシルポッパー。お尻がステンレス線グルグル巻き付けた処理になっていないけど、フロントフックはスイベルなのでおそらくワイヤー貫通だと思う。ラトル入りのプラスチック製。2OZぐらい。
このあたりの先例があって、日本のGTルアーはワイヤー貫通構造という木製プラグを超丈夫につくるのに適したやりかたを踏襲して発展していくのである。
そのあたりの、ジャパニーズGTルアーの元祖的なアレについて次回のルアー図鑑うすしお味では取り上げてみたい。
しばらく塩味が続きます。海の塩辛さに何十年も泣かされ続けてきたオッサン達は楽ししみにしておいてください。