2025年6月21日土曜日

PENN「レベルマチック920」はPENNが作ったアンバサダーじゃない!

 ワシ最近大森スピニング率が高くなってるけど、本来自他共に認める”PENN使い”である。 とはいえ、スピンフィッシャーこそ使い込んできたけれど両軸はみんな大好きアンバサダーを長く使ってきたから、PENN両軸はアメナマ釣りとかに使ってた「インターナショナル975」ぐらいしかあんまり使ってこなかった。蔵には「インターナショナルⅡ30SW」や「セネター9/0」といったトローリングリールも、ロウニンアジのキャスティングに使うつもりで用意していた「545GS」も転がってるけど、実釣で使いこなすところまでは至っておらず、いつの日か活躍させることを夢見て眠ってもらっている。

 という状況で、PENN使いなら1台ぐらい持っててもおかしくない、PENNの主にバスを釣るための(箱にもバスのイラストが描かれている)ベイトキャスティングリールである、レベルマチックシリーズには手が出ていなかった。まあ後発のインターナショナル975は持ってるしいらんだろと。ところがこれが日課のネットオークション・ネットフリマ巡回の時に、送料込み6500円というお安い値段でチョイボロ目の「レベルマチック920」が売りに出されているのを見つけてしまった。相場的には1万円チョイ切りぐらいなのでかなりのお買い得品である。正直いらんリールなので迷った。迷ったけど「迷ったら買っておけ」は蒐集家にとっての鉄則だといつも書いているし、いつものようにスルスルッとマウスが滑ってポチチであった。「ある」のが悪い!!そしてアタイ病気がにくいッ!!!

 まあ、PENNとかABUとかの実用機は買った値段ぐらいで売れるのでいらなくなったら売れば良いぐらいのつもりだったけど、このリールなかなかにというか相当に面白い。見た目ももろにアンバサダーっぽいし、平行巻機構とかもABUのパクリ(丸ABUはフルーガーの影響らしい)臭い。遠心ブレーキの効きが強すぎるのでもっと小さいブレーキブロックをと思うも、ミスティックリールパーツさん海外発送やめてしまったから、そもそもPENNの部品自体手に入れにくくなったんだよなと思ったら、丸アブのそれがそのまま使えて、さすがは丸アブのアフターパーツの豊富さよという感じであっさり解決したぐらいで丸アブの影響はもろに受けてるのは間違いない。

 1970年代の同じような時代に、日本じゃ丸アブ丸パクリのダイワ「ミリオネア」初代とかが作られてたぐらいで(訴訟沙汰になったんだっけ?)、PENNも丸アブっぽいリール作りたかったんだろうなと思って、見るからに似たような設計だろうし、だったら買うほどのこともないだろうと思っていた。でも買って良かった。見た目はアンバサダー、中身はPENN!予想外にメチャクチャ面白いリールだったので、いつものように分解整備しながら語らせていただこう。ご用とお急ぎでない方はごゆるりと楽しんでいってね。

 まずは、PENN両軸なのでハンドルナットは独特の形状で、凹った部分にねじ山をハメることで緩み防止になっている。このハンドルナット専用の工具がPENN両軸を箱付きで買うとついてきたりするので、我が家にもあって余裕の表情で持ち出してみたら、サイズが合わなくて結局モンキーレンチで回した。固着してるとかじゃなければモンキで回りますが、もちろん専用工具推奨。ネットフリマとかで売ってます。でハンドルとドラグホイールを外すとドラグホイールが回ってネジで締まっていくとメインギアの上にあるドラグワッシャー、パッドを押さえることになるスペーサーが引っ張り出せるんだけど、これが円筒形の筒状で、中に収まるメインギアを回す芯の刺さった軸が骨太い。樹脂製とワッシャーを重ねている、なんならインスタントアンチリバース(IAR)の逆転しないベアリングが入ってたりするアンバサダーと比べてエラい太くてさすがPENN”さすペン”という感じである。ちなみにハンドルは見てのとおりシングル。ギア比は4:1と低めで力強く巻ける感じ。

 でサイドプレート側から外して、スプールをすぽっと抜くと、遠心ブレーキもアンバサダー方式だし(アンバサダー用の社外品極小パッドに換装)、グルグル棒一本方式の平行巻機構も同じだし、ここまでだとアンバサダーっぽい。ちなみにフットは後期モデルではアンバサダーでいうと7000cみたいなプレート型のものになっている。こいつはプッシュボタンや逆転防止の形式を見ると後期型っぽいんだけど、フットは古い形式のがついているので古い個体に新しいパーツを換装してあるのかニコイチなのか、イマイチ年代特定しにくい個体。いずれにせよ長期にわたって同じモデルを売り続けマイナーチェンジで改良していくのは、これまたさすぺン。ちなみにミスティックさんところのレベルマチック仕様表で見ると登場は70年代中頃で、製造終了は2004というご長寿モデル。

 ただ、ここからが独特で、丸アブとかのメカプレート方式とフレーム構造に慣れていると、いきなり本体を外したら”本体蓋”の裏に直接ギアだのクラッチ板だの主要なメカがくっついていて、そもそも鳥籠型のフレーム構造じゃなくて、横棒のリムとフットをネジ止めして組み立てる方式になっているので驚く。これあれだ、ペンの旧型セネターとか樹脂製プレートを金属板で補強しつつリムとフットをネジ止めして堅牢な両軸受けリールに仕上げている、まさにその方式の蹈襲で、見た目はアンバサダーっぽいけど、構造やらの設計的にはペンの従来型の両軸機種の発展系であると理解した。出自が全く違うといっていい。ちなみにインターナショナル975はアルミ削り出しの一体フレームで、なんなら今の丸ABUにIARが入ってるのと同じようにハンドル基部に瞬間的逆転防止機構も入っているし、こちらはペンインターナショナルシリーズの系統に入れられているとはいえ、シマノ「カルカッタ」の流れをも汲むわりと今時のありがちなアルミ削り出しフレームの丸型ベイトキャスティングリールで、その印象もあってレベルマチックがこんなに独自色の強い機種だとは想定外だった。ちなみにミスティックさんところの部品販売上での仕分け的にリールは「コンベンショナルリールパーツ」「スピニングリールパーツ」「インターナショナルリールパーツ」「フライリールパーツ」に分けられていて、レベルマチックは”従来の”とか”伝統の”という意味の「コンベンショナル」に分類され、インターナショナル975は当然「インターナショナル」に分類されている。

 でもって、分解進めてメインのギア周りを分解。本体蓋?にネジ4本で止められている主要メカ部分をパカッと外す。

 メインギアも外してギア上のドラグを見ていくと、小型機だけど3階建ての多板方式なのはさすぺンで、これが70年代の設計とは思えないぐらいに調整幅もあれば、キュッと締めるのもできるし、滑り出しも良くシャクリもしない「PENNはドラグが良い」の定評を裏切らない良いドラグ。同時代のアンバサダーのドラグも実用充分に良いドラグだけど、レベルマチックのはバス釣るには過剰と思えるぐらいに性能が良い。どんなドラグパッドとか使ってるんだろうと思ったら、バネ的なモノは一番左端に写ってる金属製の曲げワッシャーのみで、ドラグパッドが革製で、こいつがどうも良い仕事しているようだ。革のドラグパッドは腐ってることも多いけど、コイツは健在でグリス塗り直してそのまま使うことにした。2000年のPENNカタログからの孫引きになるけど、ミスティックさんところのレベルマチックの仕様説明をグーグル翻訳して引用すると「Levelmaticベイトキャスティングリールは、コンパクトで効率的なファイターです。小型軽量でありながら、体躯の大きな捕食魚にも負けないパワーを備えています。頑丈なアメリカ製のこのリールは汎用性も高く、様々な釣り場や用途に対応します。レッドフィッシュのキャスティング、スヌークのプラッギング、パイク、マスキー、ウォールアイのトローリングなど、様々な釣り場に対応します。淡水、海水、汽水を問わず、Penn Levelmaticならどんな場所でも対応可能です。ヒラメをフラットにしたり、大型ブルーフィッシュを倒したり、レッドフィッシュと激しく競り合ったり、ラージマウスバスを水平に釣ったり。」となっていて、小型機(軽量は疑問?)だけどバスだけが対象じゃなくて、何でもイケるぜな心意気で設計したので、バス用としてはドラグにしろ塩水でも錆びにくそうな素材選びにしろ過剰なぐらいの性能を与えられているのだろう。ヒラメをフラットにするのが何を意味するのか良くわからんにしてもたいした自信だ。今まで革のパッドは腐ってカピカピになってるようなのしか経験してなかったので、本来の革パッドの性能はなかなかに優れているのだと理解した。メインギア下の赤ファイバーのワッシャーは滑りと劣化しにくさに勝るテフロン製のモノに換装。

 でピニオンギアとクラッチの関係、逆転防止の方式もバラしつつ勉強しておく。

 一番上の写真ではいま、ピニオンギアが下がって(使用時には引っ込んでたのが出てくるので上がるイメージ)スプール側の俵型した凸部が写真だとピニオンギアにガチッとハマってクラッチが繋がった状態。ここからカチッとボタン手前に引くと、右下の板が押し込まれて、板の上の斜め突起が、ピニオンを押さえている板を、真ん中写真のように矢印の方向に押し上げて、スプールとピニオンの連結が離されて、フリーに回転するようになる。で、ハンドル回し始めると、ハンドル軸の逆転防止のラチェットの下に2カ所蹴飛ばす突起が設けてあって、それが上の写真の上の方のバネで引っ張ってるグニャグニャ曲がった板を蹴っ飛ばしてカチッと元の位置に戻ってクラッチが繋がる。この方式はインターナショナル975でも似たような感じだった。

 逆転防止はインターナショナル957ではハンドル基部に一方通行のベアリングが入れられていたけど、レベルマチックでは一番下の写真のようにメインギア下のラチェットにオレンジの矢印のバネでドックを押しつける方式。水色の矢印のところがちょうどラチェットにドックが掛かってるところ。で、レベルマチックは逆転防止がそういう方式なので巻くときカリカリ鳴るリールだよってのを何度か読んだ記憶があるけど、この個体は鳴かないのでグリスかなんかで音がしなくなってるのかなと思ったら、消音化されていた。緑の矢印の青銅の板がメインギアの下面に当たるようになっていて、正回転時にはドックをラチェットに押しつけないようにしている。ABU方式だと青銅版でラチェットを挟むんだけど、こういう方式もあるのね。どうも、消音化したのは最後の方らしく、ミスティックさんところで展開図を見ると、該当部品は15-910DOGで消音化の板が付いてるイラストになってるけど、部品注文画面で確認すると消音化の板は付いていない。

 で分解終了すると、ベイトリールって多分今時のでもそんなに複雑化してないはずで、こんなもンかなという感じ。ただちょっと困ったのがこのリール2カ所にボールベアリングが入ってるんだけど、これが外し方が分からん。検索掛けたら外し方があるらしいということは分かったんだけど、具体的な方法までたどり着かなかったので、知ってる人が居たら教えて欲しいところ。展開図みてもCクリップ的な輪っかを外せば外せそうなんだけど、ベアリング自体のリングかなというのはあるけど、細かすぎてなんか違う気がするし外す自信もない。海外サイトの「アラン・タニのリール修理」でタイリー氏が詳細に整備方法紹介してくれているけど、「ベアリングは前回いじったから今回は注油だけにしておくぜ、ハッハッハ」って肝心なところを飛ばしててイーッとなった。あと、クラッチ切るボタンは力業で押して抜く方式のようなので今回はさわらないでおいたぜハッハッハ。

 分解したらパーツクリーナーでプシューとして歯ブラシでゴシゴシ、ティッシュでふきふきで、今回グリスはPENN純正、オイルはいつものダイワリールオイルⅡで仕上げておいた。表面のアルマイトが腐食してるところは、とりあえず見栄えより腐食の進行を止めるの優先で、瞬間接着剤で保護しておいた。エポキシやら車用タッチペン塗料とかだと、すぐ剥がれ落ちたりするので、多少白く粉吹いてみっともないけど機能に支障をきたさないようにという処置。今回、デジカメ写真で分解中バチバチ撮りまくってバネとか部品の配置とかを確認できるようにというのはいつもどおりやってたんだけど、慣れてない独特の癖の強い機種だったので、何度もデジカメの小っちゃい画面で確かめるのは、いちいち立ち上げて該当写真探してと面倒くさいので、PCに取り込んで画像ソフトを立ち上げたままでPC前で作業したら、画面大きくて見やすいし順番に写真遡っていけば良いしで作業しやすかった。とはいえ、ピニオンギアを押さえている板を2本のバネを縮めつつ他の部品とも重ねて填めるのはちょっと知恵の輪状態で手こずった。あと本体にメカ部分をネジ止めするとき、外側の2本は樹脂製のクラッチ関連部品を挟み込んでいるので、ネジをきつく締めていくと樹脂部品が変形していくのかいくらでも締め込める感じでやばいので、適当なところで止めておかないとよろしくなさそう。前述したようにフレームが一体型じゃないので、リムやフットをネジ止めしていくときは偏らないように軽く締めてからハンドルグルグル回して良い感じの位置に収めてからしっかり締める、というお作法を怠るとゆがんでどっか干渉してしまうことがあるやにも聞く。

 でもって、使ってみるとこのリール、多少癖が丸ABUとかとは違うので慣れるまでちょっと戸惑うけど、慣れてしまえば魚釣るのになんの問題もない性能を有しているのが分かる。30年にわたるロングセラーッぷりも頷ける感じで、丸アブのいまだに製造販売されている愛され方には負けるにしても、個性的で”さすPENN”な堅牢な作り、優秀なドラグ。一目でPENNと分かるアルマイトゴールドの存在感。すごく良いリールだと思う。

 写真でしか見たことなかったので、ABUだと5000番クラスの大きさだと勝手に思い込んでいたけど、写真でも分かると思うけど赤いアンバサダー5000より一回り小さい感じで、なのに重量は約335gとずっしり重く、イト巻いた状態の5000が約285gなのに比べて、軽量とは言いがたい重量になっている。でも、カップがアルミ以外はれいによってステンと真鍮使いまくりで、丈夫で耐腐食性に優れていて、そういう意図があって重くなってると理解すれば、丸アブより重いといったところで、しょせん小型のベイトキャスティングリールの範疇であり、どうってことはない。

 いつも書いてるけど、ハリとイトは大事でこだわらないといけない。こいつらに不備があると釣りが破綻するってのは、ちょっと前にトラウマになるぐらい痛い目みて思い知らされたところである。いつも書いてるくせにっていうお粗末な話。竿はまあ好みもあるだろうけど釣果を左右する部分もあり、弘法筆を選ばずで好きなの使ってもハリとイトさえ良ければ、最悪魚バラして終わるだけでよそ様に迷惑掛ける話じゃないので、クッソ使いにくそうな竿みんな使ってるけどご自由にだ。さらにリールまで来たら、投げて巻けりゃ十分で、もろに楽しんで自分の好きなリールで釣れば良いと思ってる。投げて巻くのがトラブルなくできるなんていうのは70年代のリールで既にできてたはずなのに、アホな釣り人に売らんがために変な方向に行ってしまってる今時のリールを”性能が良い”と優良誤認して使うぐらいなら、丸アブならもちろん信頼と実績充分だし、PENNのレベルマチックも悪くない選択肢だと思うのじゃ。まあ、レベルマチックはマニアな人は使ってるから、今更ワシごときが書くまでもないかもだけど、古ABUはお高いけど意外にレベルマチックお手頃価格でっせ、とワシが儲かるわけでもないけどお推めしておきます。

2025年6月14日土曜日

ピアレス!オフランス製ざます!!「BAM510M」

 絵だの作文だので賞をもらうとか、スポーツで上位入賞とか、学生時代にはそれなりに機会もあるし、チャレンジの場もあるけど、大人になるととんとそんなモノには縁がなくなる。まあ職場でも部長賞とかその手のが無いわけじゃないけど「賞はともかく金一封はナンボよ?」とか下世話な方向にいきがちな世知辛いしろものであり、純粋に自分の活動に対してお褒めいただき喜ぶというようなことはとんとなかった。

 なので、仲良くしていただいてるネット釣り仲間のMasahiro さんのブログ「アメリカのソルトルアーで日本の魚は釣れるの?」で行われた翻訳コンテスト において、我が翻訳案が見事”優秀作品”に選出され、ワシも苦節17年がところ”お気楽ブロガー”として駄文を書き連ねてきたわけだけど、多少は人様にお褒めいただく”一言半句”が書けるようになったのかなと思うと、素直に嬉しく誇らしく思うところ。コンテスト内容についてはリンク張ったのでそちらで楽しんでいただくとして、我がブログではなんと豪華副賞としていただいてしまった、ちょっとオシャレなフレンチスピニングについて、いつものことながら分解しつつあれこれと書いてみたい。ということでご用とお急ぎでなければゆるりと楽しんでいってください。

 して、そのリールが冒頭写真のピアレス「BAM510M」で、見てのとおり”ベイルレス”マニュアルピックアップのシンプルなワシ好みのスピニングなのである。ただ500g級のそこそこの大型機で、実釣に連れ出すかどうかは微妙なところ、新品箱入りでもあり綺麗なボディーのまま傷つけずに持っておきたい気もする。いずれにせよ我が家に来たからには分解整備なんだけど、基本注油とかは済んでいるので、今回は分解して設計を見るのと、どうもかなりの”プリン巻き”らしいのでその辺をどう対策するかってあたりが”お題”となってくる。

 なのでまずはいつものように分解からである。スプール周りから見ていくと、ドラグはシンプルでスプールの上と下を押さえる方式で、ミッチェルの国のリールだなと思う。思うんだけど、スプール下面に何らかの繊維を樹脂で固めたようなドラグパッドが2枚入っていて、こちらの方が上より面積大きくスプール側下面にははめ込みでスプールそのモノじゃない謎金属のスリーブっぽいのがハマってるのからしてもメインのドラグとみて良さげでこちらはまあ良い。逆に上部は謎金属のスリーブ上部を金属ワッシャーで押さえていて、そりゃアルミとかのかたくなさげな金属を金属で摩擦させたら削れるだろう?というよろしくない塩梅。あとでここはいじってみたい。

 次に本体パカッと開けて、心臓部のギアやら主軸やらを見ていく。

 ギア方式は単純明快ベベルギア方式。スプール上下(オシュレーション)も単純なハンドル1回転で上下一往復する形で、オシュレーションスライダーは樹脂製だけど、スライダーに刺さるハンドル軸のギア上のピンには真鍮製のスリーブがかぶせてあって丁寧な造り。スライダーの固定は、主軸に穴開けて横棒を突っ込んで、その横棒がスライダーの上にハマって、その状態で固定するように下部に切った溝にEクリップがハマる形になっている。

 主軸はステンレスっぽい鉄系で、ローター軸のギアは真鍮、ハンドル軸のギアはこれまた鉄系の芯を鋳込んだ亜鉛っぽい感じで、なんというかギア周りは「マイクロセブンDX」の頃の大森製作所みたいな感じで、真面目に作ってる感じがする。良く言えば古き良き時代を引き継いでる感じで、悪く言えば時代遅れで古くさいとも言えるけど、どちらかというとワシには好ましい。ハンドル軸が鉄系の芯なので当然ながらねじ込み式ハンドル。そしてお待たせしました。全国のBBB団(ボールベアリングをボロクソにこき下ろす者の団)の皆様。久しぶりのボールベアリングレス機です。本体はアルミ鋳造なんだけど、真鍮製のローター軸ギアは本体にネジ止めした真鍮製のスリーブで受けていて、ギア比はだいたい1:3.5ぐらいの低速機なので”ブロンズベアリング”でまったく巻きの重さとかの問題はない。なかなかに心臓部は分かってる人が作った感じになっている(でも同じピアレス社の高級機種にはボールベアリング2個”も”入ってるけどな)。

 で、もいっちょ良いのがラインローラーで投げてるときに出て行くラインがふくらんだのを拾ったりしないようにガードする棒が出てるんだけど、見た感じナットで締めただけなので回ってしまいそうに思うんだけど、分解してみるとネジとベールアームの穴が片側切り欠いてあって方向固定できている。そしてラインローラーは斜めに傾斜のあるツイストバスター系の1カ所にラインが落ち着く形状、回転式で当然のようにボールベアリングじゃなくて樹脂製スリーブが入っている。良いジャンこのリールって思うところ。

 部品数も少なくて、単純設計だけど安っぽい造りじゃなくてちゃんとしてる。以前マニュアルピックアップ機のPENN「706z」をネタにしたときに、norishioさんにフランスにこういうリールがあるよ、と書き込みいただいてた、まさにそのリールだったのでちょっと気になってはいたんだけど、実物目にする機会があって触ることができて実に勉強になった。日本じゃ知名度も無いおフランスの地場リールだけど、なかなか良いリールでした。
 って、めでたしめでたしで終わらないのがドラグをチョイいじりたくなるのとあわせて、最後に残しておいた、ラインが後ろ巻きになっていわゆる”プリン巻き”になる問題で、まあ最終的にはFRPの輪っか填めてアレしてしまえば良いんだから、どうにでもなるとは思ったんだけど、意外にこれがどうしてどうしてって感じだったので、そのあたりを引き続きネットリと書いていきたい。

 まずは、プリン巻きの問題から手を付けてみるけど、これはちょっとどうなのよ?という状態であることが明らかになる。
 下巻きをなんぼか巻いてみると、スプールの下端から巻かれるのは良いとして、上端は斜めになってるスプールエッジの上の方はもとより、底の方の段階ですでに上に届いていなくて、実際にラインが巻かれる幅が、スプールの幅より極端なぐらい狭い。試しにノギス当ててみると、ラインの巻かれている幅(=スプール上下幅)は約14mmなのに、このぐらいまでライン巻いておきたいなというところでスプールの幅を測ると20mmもある。その差6mmはしゃれにならない数字である。で実際にプリン巻きになるぐらいまで下巻き巻いてみると、分かりやすいように最後ライン色変えてみたのが右端の写真だけど、ラインが往復しているのは水色の線で示した幅で、それより上にも下巻きが巻かれているのは、ラインが崩れて広がった分で、巻かれるラインの上部が常に崩れてグチャッとなる分プリン状に巻かれてしまっている。ちなみに真ん中の濃い青の線ぐらいまで巻きたいところだけど、水色の線といかに差が大きいか分かるだろうか?

 要するに設計として、スプール上下幅よりスプールの糸巻き部分の幅が広すぎるというのが決定的で、かつなだらかに傾斜するスプールエッジの形状もよろしくない。ということだろう。内部の設計が真面目でしっかりしているのが大森製作所っぽいと感じたけど、スプール形状がイマイチなのも一緒というより、より極端になっている感じ。
 大森スピニングに処置してきたように、FRPの輪っかを填めてスプールの幅を調整して、スプールエッジの形状を真っ直ぐに整えてやれば抜本的な解決はできると思う。思うけど、そういう”魔改造”は実用機ならやることにためらいはないけど、日本じゃ流通も少ない希少な珍品に、不可逆な改造を加えるのははばかられる。となると、この極端な後ろ巻きをどうにかしてお茶を濁してしまいたい。
 後ろ巻きを補正するには、ラインローラーの位置を上げる、スプールの位置を下げるという方向で、いくつかの手段が考えられる。ラインローラーの位置を上げるには、ベールアームの形状を曲げて伸ばしてラインローラー位置を上げるという力業と、ローターが乗っているブロンズアリングとローターの間に下駄を履かせて嵩上げする。というのが思いつく方法だけど、ベールアーム形状の調整はペンチや万力、トンカチをつかった力仕事で失敗すると取り返しがつかなくなるのであまりやりたくない。スプールの位置を下げるには、スプールが乗ってる台座の上のドラグパッドを薄くするのと、主軸が刺さってるオシュレーションスライダーの上の横棒がハマる溝を深掘りして、その分Eクリップとスライダーにできた隙間に適切なスペーサーを入れる方法を考えたけど、後者は不可逆な手の加え方なのでできれば避けたい。
 ということで、お手軽にできるローターの嵩上げと、スプール座面のドラグワッシャーを薄いのに変えるというので、6mm調整してスプールエッジ丈夫までラインが巻かれて、逆にスプール下部ではラインが崩れまくる極端な前巻きには持っていけなくても、3mmぐらいズラして真ん中へんに持ってきて、なんか樽状に巻けるようになれば良いかなという方針で行ってみた。写真左がローター嵩上げで、黒い根元にみえてるのが元々のスペーサーでそれに加えてローターを1.5mm厚のジュラコンワッシャーで嵩上げした。もう1枚重ねて3mmUPも検討したけど、ローターをローター軸のギアに止めるナットが半分ぐらいしか締められなくなるので無理っぽい。写真右がスプール下の座面にカーボンシートを耐熱接着剤で固めた自作ドラグパッドで、もともとの堅めの樹脂製ドラグパッド2枚と交換、1mm強ぐらいは低くできたと思う。ついでにドラグは調整幅が出るようなバネ的構造がないので、ドラグ上部金属面どうしで摩擦してるのを間にパッド入れるのと調整幅を稼ぐために2mm厚の硬質フェルト製のパッドを入れてみた。ドラグ上面にパッド追加はスプールの上下位置には影響しないけど、ローター嵩上げとスプール下面のドラグパッドを薄くすることで2.5mmぐらいはラインが巻かれる位置が改善されたと思う。
 思うんだけど、今度はなぜかドラグがしゃくって塩梅悪くなった。ドラグが不安定になる要素はあんまりないけど、あるとしたらフェルトパッドか?とテフロンの薄いパッドに交換しても変わらずだったけど、スプール下面の台座上のドラグパッドを自作カーボンシート製パッドから、もとの堅めの樹脂製2枚のうち1枚に戻したら安定した。カーボンシートのドラグパッドは信頼性高いと思ってたけど、たまにドラグ周りは、理屈や経験則にあわない「なんか知らんけど上手くいく組み方」があったりする。
 ということで、ドラグ方面はスプール下面は純正堅い樹脂製を2枚から1枚にして、スプール上面には薄いテフロンパッドを新たに入れた構成になった。3mmズラせればスプール糸巻き部分の真ん中にラインが巻かれるようになって樽状の巻き上がりになるところだけど、これで2.5mmぐらいのズラし幅になって、チョイ後ろ巻きぐらいにはできた。右の写真でスプールの上面と下面にもオレンジのラインが巻かれているように見えるけど、これは金属面に写ってるだけで、実際に巻かれている目印のオレンジラインはスプール下面よりちょい上から巻かれてスプール上面からはまだやや遠い位置まで巻かれている。まあ2.5mm強の調整だとこんな感じ。

 で、冒頭写真で写ってるプリン巻き矯正エコノマイザーをスプールに装着してラインを巻いてやると、写真上のような感じになって、ここまでやってもスプールエッジ近くでラインが崩れて微妙にプリンっぽいけど、このぐらいで勘弁してやろう。これ以上どうこうするなら、スプールの幅をアレして調整だろうな。これひょとして昔はもっとスプール幅狭かったけど、今時のスプールでっかいスピニングの流行追って、雑に主軸とスプールだけマイナーチェンジとかしてるんじゃなかろうか?どうなんだろ。
 で、Masahiroさんに教えてもらったんだけど、マニュアルピックアップ機とハンドル一回転でスプール上下一往復のオシュレーションは相性が良くて、ハンドルを下げたときにスプールが一番上がった状態にハンドルの向きをギアとあわせておけば、常にハンドルを下げたときにスプールが一番上がった状態で投げることができる。
 これは、逆にスプールが下がった状態で投げると、スプールから出て行くラインをラインローラーが意図せず拾ってしまうトラブルが生じるからで、マニュアルピックアップ機では投げるときにスプールは上がった位置であることが望ましい。写真下の位置関係見るとスプールから放出されるラインがふくらんだら確かに引っかけかねない。それを防ぐガードがついてるにしてもである。
 ってのをバンスタールとかは良く分かってて、バンスタール使いの友人にMasahiroさんがマニュアルピックアップ仕様にしたPENN「トルク」を試してもらったとき「ハンドル下げてもスプールが上に来ないから怖くて投げにくい」と言われたそうである。トルクは減速オシュレーション方式なのでハンドルが下に来ていてもスプールが上にあるるとは限らない。その点でも、スプールが上に来た状態でも人差し指がスプールエッジに届く点でも、BAM510Mは合格で分かってる感はある。
 マニュアルピックアップじゃないフルベールで減速式のオシュレーションが搭載されているスピニングで、ハンドル位置が投げたときに勢いで勝手に回りにくい下に来たときに、必ずベールが起こしやすい位置に来るかというとそうでもなく、そのへん瞬間的逆転防止機構が搭載されてなくて遊びが多少あれば、ローターは多少角度変えても増速してるのでハンドルはそれほど動かず調整可能で都合が良かったというのはスピニングリールが分かってる識者の多くが指摘するところ。フルベールの場合投げるときにスプールが上に来ることは必要ないのでハンドルが下の方に来てベールワイヤーが手前に来るようにすれば良かった。PENN7500ssとかギア比の関係か良い位置に来る状態をキープするために垂らしの長さをいつも同じにしてればいつもハンドル下に来たらベールワイヤーが手前に来てたような記憶がある。
 逆に、減速方式のオシュレーション採用のマニュアルピックアップ機では、投げたときにハンドルが回ってしまってもベールが返るわけじゃないので、スプールが上に来てラインローラーが手前に来たら、ハンドル位置はあまり気にしなくても良いかも。減速式オシュレーションならハンドルが多少回ってもスプールはそこまで上下位置が変わらない。と思うけどどうだろうか。でも投げたときにローターが回ってしまうとラインを意図せず拾ってしまう確率が上がるか?

 いずれにせよ、このピアレス「BAM510M」。総合評価としては、既に書いたように「メカは良くできてるのに、肝心のスプールがイマイチ」という、大森スピニングと似たような評価で、スプールの問題はスプールの幅を改造してしまえばなんとかなるので、ワシ的には充分”有り”だと評価する。大森製作所とちがってデザイン的にオシャレな点は高評価(大森のデザイン、昭和骨董的で好きだけど優れているとは思わない)。流石はフレンチリール。このリールがこの時代まで、こんな古くさい設計で生き残ってきた要因の一つにはルックスの良さがあるんだろうと思う。なんというか金持ちが海辺の別荘ででも使うクルーザーとかに、今時のメイドインジャパンとかデザイン的にダサすぎてしっくりこないだろう。壊れるところもなければ、巻き取り効率よいベベルギアかつ低速機でそれなりに大物が来ても大丈夫、使いどころさえ間違えなければ実用的でもあるだろう。錨泊地でチョイと釣りでもするか、という時にPENNのインターナショナルとかゴツいの出すのも違うだろうしな。フルベールアームが登場する前からスピニングリールが市場にあった欧州という土地柄的にもマニュアルピックアップ機には馴染みもあるだろう。
 っていうような理屈は考えるけど、結局のところどのメーカー、ブランド、機種が生き残り、逆に消えていったか、それは歴史の偶然でしかないように思う。
 何度も書いているけど、良いモノが評価され生き残るのなら大森製作所「マイクロセブンC」シリーズなんていう傑作機が過去も現在もたいして評価されていないし、大森製作所は潰れてしまったのはなぜなのか。日吉も韓国に生産拠点を移して生き残りを図ったけど、良いリール作ってたけど生き残れなかった。でも松尾や瑞穂はリールだけ作ってるわけじゃないので”本業”で生き残ったとしても、五十鈴がしぶとく高級マニアック路線で生き残ってる(大森の二代目も五十鈴に籍を置いていると聞く)。それはなぜなのか?少なくともワシには分からんわい。
 生物の進化でも、現存する生物がその形でいるのは環境やらに適応して必然的にそうなっていくというのもあるけど、根源には偶然性があるようにいわれている。なぜ人類はホモ・エレクトスとかネアンデルタール人じゃなくてホモサピが生き残って繁栄したのかにせまったNHKのドキュメンタリーを見たけど、何度も起こった危機がたまたまホモサピに味方しただけで、一つ間違えれば絶滅していてもおかしくなかったと解説されていて興味深かった。なぜオーストラリアは有袋類天国なのか、なんてのも大陸移動とかの偶然でそうなっただけだろう。そのオーストラリア以外では消えていった有袋類のなかで、なぜオポッサムだけは南北米大陸で生き残ったのか、生態系の地位が空いてたとかなんとか理屈はつけるんだろうけど、じゃあ他の有袋類との違いは?とかいうと結局説明つかなくて、たまたま生き残った結果生き残ってるとしかいいようがないんだろうと思っている。

 なぜ、ピアレス「BAM501M」が生き残ったのか?理由は結局のところ分からんけど、こういう個性的なリールが生き残れるぐらいには、世界は多様性に満ちた趣味趣向にあふれているってのは、似たような流行追っかけてるだけの没個性的なつまらんリールにうんざりさせられている中、ちょっと良い感じの福音なのではないだろうか。

2025年6月7日土曜日

釣り宿ナマジ、改装リニューアルオープン!

 我が家は借家なんだけど、ハッキリ言ってボロい。まあ家賃がクソ安いので全くもって文句言うべきではないところだけど、できうるなら快適に暮らしたい。住み始める時には、内装のベニヤとかも剥がれてたりしてたので、時間もできるだろうし日曜大工で快適にリフォームしていこうと思って墨壺やら平衡器やらもまずは買ったんだけど、これが年中魚釣るのに忙しく、さすがに雨漏りは直さざるを得ないので、屋根に上って修理したりはしてるんだけど、内装関係はほぼ放置していた。ベニヤが剥げてようが、畳がすり切れてようが死にゃあしない。

 と思ってたんだけど、畳がすり切れてるのがちょっと尋常じゃなくなってきて、原因としては愛猫コバンが元気に部屋の中走り回るから削られていくッテのがあるんだけど、畳表が剥げて下の地が見え始めてるし、ところどころ縁の布がボロくなって剥げてる。とりあえず、これ以上崩壊が進まないように米国人大好き”ダクトテープ”を貼ってみたり、広範囲に禿げちょろけてきた所は段ボールでパッチ当てたりしてるんだけど、当座しのぎにすぎず、かつお客様部屋はもうちょっと小ぎれいにしておきたい。まあ”釣り宿ナマジ”のお客さん達は、このボロさも味わいのうちとして楽しんでるようではあるにしてもだ。

 ということで、畳表の張り替えをせねばならんのかな?と思うんだけど、畳表の張り替えは一枚5千円からしてきて8畳間二部屋やるとなると結構オゼゼがかかり、畳屋さんにあずけてる間の時間もかかるうえに、張り替えても客間はともかく居室はどうせコバンが走り回って削ってしまうからあんまり意味がない。ぶっちゃけ港至近のこの家は津波が来るまでしか使えないので、南海トラフ地震はいつ来てもおかしくないと言われている状況の今張り替えても、すぐに海の藻屑になりかねずあまり気が乗らん。って言う感じでうだうだと先延ばしにしていたけど、いっそ全面段ボールを敷いてしまうかとか考えてて、まてよゴザってい草でできてるし、畳の上に敷いたら似たような感じになるし、耐用年数的にはたいしたことないかもだけど、値段がその分安ければ適当に交換していけば良いだろうから、手間もかからんし現実的ではなかろうか?と考えて、ア○ゾン様で探ったら、手頃な値段のセール品で3畳型一枚約4千円ってのと、1畳型約千円ってのがあって、とりあえず客室用に3畳2枚と1畳2枚と、居室の座ってるPC前用に1畳1枚を購入してみた。

 で、まあめんどくせえことは何もなく、部屋の角とかにあわせて敷き詰めていって、畳用のピンで要所要所留めていくだけでサクサクっとお部屋がリニューアル。
 多少しわが寄ってるのは保管時の折り癖が残ってるだけでそのうち解消するだろうから気にしない。
 多少気にしたほうがいいのは、元々の部屋の畳が”江戸間”か”京間”かの確認ぐらいだけど、紀伊半島でも普通に江戸間なので最近は京間のお屋敷なんて関西の何代も続くような金持ちしか関係ないのかも。

 ”畳と女房は新しい方が良い”などと言うと今時フェミニストどもにつるし上げ食らいかねないけど、確かに新しいイ草の香りは悪くない。畳じゃないけどな。女房の方については黙秘します。ちなみに女房と味噌は古い方が良いって言葉もある。感じ方には個人差がありますっていう多様性の時代。

 とまあ、畳については結局”みっともねぇ”ってのを除けば実害はなく、なんなら段ボールを敷いて対応しておけば、経費的にはタダ同然でいけたんだけど、段ボールはどうにも健康的文化的な生活っていう見た目になりにくいので、思いつきでゴザでどうにかしてしまった。経費もそれほどかからず、それなりの耐久性がゴザにあるようなら費用対効果的に悪くないだろう。

 っていうのとは別に、切実な問題が屋根の雨漏りの他にいくつか生じている。屋根や畳のような建物に付随するものではなく、家電の類いで、3つほど購入やら買い換えやらが必要になってきていた。どれも今すぐでなくて良いんだけど、性能が落ちてきたりしているので長期的には買い換えしないとi
けないのが、冷蔵庫と瞬間湯沸かし器で、瞬間湯沸かし器は入居した当初から湯温が安定せず、低めの設定温度でないと熱湯と水が交互に出てくるような感じで、センサーのバイメタル(温度による収縮率の違う金属を貼り合わせて曲がり具合でスイッチが入ったり切れたりする方式だけど、今でもその方式なのか?)がバカになってるのかもしれん。修理に出すか買い換えるかだけど、低温の設定でも凍えなきゃならんような状態にはないので喫緊の課題ではない。もう一つが冷蔵庫で九州時代から使ってるのでかれこれ15年選手であり、クソ夏の高温時に冷蔵室の冷えがイマイチと感じるようになってきた。冷凍庫は問題ないので夏には定期的に冷凍庫で作ったペットボトル氷を冷蔵室の上の方に入れて低温を維持したりしているので、そろそろ買い替え時である。冷蔵庫に関してはシラスウナギで稼いだ分で買い換えることを目標としており、現在2万円強貯まっている。冷蔵庫今のと同じぐらいの型の新品買うと、国産有名メーカーだと10万円以上、中華製で名前聞いたことあるメーカーだと5,6万ぐらいで、中古は運次第、できることなら10万円以上稼いで国産の良いのを買いたいところなので、来期もせっせとシラスかきせねばである。性能の劣化速度が速いか、”シラス基金”が貯まるのが早いか微妙なところである。

 というのの他に、今現在は問題ないけど、ナニか起こったときに重大な問題になりそうなのが3つめのエアコンである。我が家には1台エアコンがありクソ夏でも快適に過ごせる魔法の機械なんだけど、使っててたまに思うのは「これ、故障したら死にかねんよな」ということで、EUであったように電力供給システムの不具合で停電とか、インドであったように生活インフラへのサイバー攻撃とかで停電ってなったら、太陽光発電とかの自家発電設備でも持ってないかぎりどうしようもない。っていう根本的な問題はあるにしても、機械が1台しかなくて故障したら健康上甚大な被害が予想できるっていうのは避けておかねばと、昨今のクソ夏の度に思ってた。けど、のど元過ぎれば熱さ忘れるって話で、涼しくなると忘れてしまい。かといって夏の暑い時期には電気屋も繁忙期で工事もすぐには来てくれないしエアコンも強気の値段で高い。しかし昨年のクソ夏の暑さはさすがに懲りて、黒潮大蛇行終息で涼しくなるかもって話も耳にするけど、どのみち海水温上昇傾向は続くのだろうから憶えてるうちに買っておいて正解だっただろうと思うけど、2月まだ寒いうちに近所の電気屋さんがセールやってたのでガツンと工事費込みで8万円弱かけて客室の方にもエアコン取り付けてもらった。これで、エアコン片方壊れてももう片方の部屋で涼しく過ごせる。

 過ごせるんだけど、実は古い家なので、エアコンだの電子レンジだのといった大容量の電力を消費する電化製品が想定されておらず、配電盤でブレーカーごとに配線分かれて各部屋に電源が配分されていれば問題ないけど、結構大くくりでまとめてあって、エアコンのある居室と客間は同じブレーカーに繋がる配線で、同時に稼働すると設定温度とかにもよるだろうけど「ブレーカー落ちる可能性があるよ」との電気屋さんのご指摘。配電盤から新たな線を引っ張ってくれば解決だけど、電気工事やってもらうとまたオゼゼが飛んでしまう。なんとかならんかなと考えて、廊下挟んで向かい側の釣り具部屋は別のブレーカーに繋がってるので、そっちから延長コードで引っ張ってくるのぐらいは日曜大工でできるだろうということで、とりあえず居室のコンセントに突っ込めるように電気屋さんには工事してもらっておいて、その後暇をみてメジャー片手に配線経路を考えて、7mの延長コードを買って、天井付近の梁にヒートン打って、無事釣り具部屋のコンセントから引っ張る体制は整って、電源問題も解決。これまで釣り宿ナマジは夏の営業はしてなかったけど、エアコン着いて1年中お客様を迎えられる体制が整った。

 いつもご利用いただいている皆様、新装開店となりました”釣り宿ナマジ”を今後ともよろしくお願いします。看板猫コバンによるご接待(お触りOKでっせシャチョーさん!)、産直のトレトレの魚を中心とした料理、最新の情報に基づく釣り場ご案内は引き続き当宿の”売り”でございます。これからもご期待のうえご指導ご鞭撻のほど重ねてお願い申し上げます。

2025年5月31日土曜日

君の名は?テナガエビ三種盛り編

上からテナガエビ、ヒラテテナガエビ、ミナミテナガエビ
 ワシ、結構釣れた魚(に限らないけど)が初物だった場合、大喜びする。過去何度も、「君の名は?」と問い、魚種を特定するために鰭の筋の数やら、模様の違いやらこまごまとした違いを調べてという同定作業をこなしてきた。

 そんな細かい違いに何の意味があるのかと、釣ったら自慢できるような魚種ならともかく、”外道の雑魚”の名前が分かったぐらいでナニが面白いのか?と感じる人もいるだろう。まあワシそもそも外道も雑魚も魚を指し示す概念として持ち合わせていないからな。

 ただ、言わせてもらえれば、自分の釣っている、釣った魚がなんなのか、その最も基本的な情報である魚種名さえ知らないとなると、ナニを足がかりにその魚の情報を探っていけば良いのか?その魚が釣りの直接の対象魚でなくても自分の狙う魚とどういう関係があるのかは知っておくべき情報のはずである。もちろん同じ魚種においても地域差とか個体差も生じ得て、釣り人は時に、「種」以上に細かく自身が釣りの対象とする魚について知っていかなければならないとしても、まずその魚の種名ぐらい分かってないと話にならない。昔の磯の底モノ師がハタの類いの大型種を全部”クエ”のひとくくりで済ましていて、そんなんじゃ戦略立てようがないだろうと呆れたものである。少なくとも種が違えば生態や行動に差があっておかしくなく、最終的に包括的に複数種を狙うことになることは珍しくないにしても、種ごとにどう違うのか、どう同じなのかが分かっているのと分かっていないのでは大違いで、戦略の立てようが違ってくるだろう。

 過去何度も書いた繰り返しだけど、生物の世界はきっちり切れ目がある世界ではなく、むしろ今現在でも変化して進化して種の分化や統合が起こりつつある状況にあって、「種」という整理は、人間側が名前付けて整理しておかないとややこしいので、一定の基準で、本来なだらかにグラデーション状に変化していく生物の集団に人間の都合で分かりやすいように区切りを設けたモノだと思っておけば間違っていないと思う。というここで、おさらいがてら「種」という概念とその定義を確認しておくと。生物学的には「種」は形態や生態により、他の生物集団から区別できる生物集団であり、同一の種内では交配して子孫を残すことができ、他種とは遺伝的に隔離されている。というのが一般的な種の概念で、最後の「遺伝的に隔離されている」ことは「生殖隔離」とよばれたりして種の定義とされている。ただ、さっきも書いたようにキッチリ線引きができるモノではないので、アマゴとヤマメみたいに普段は生息地のちがいとかで生色隔離が成り立ってるけど、一緒にしておけば交雑してしまうような、種よりゆるやかな分かれ方「亜種」とされたり、DNAとか調べると結構ちがう傾向が出てくるけど、普通に天然でも交雑してることも多く、なだらかにいろんな変化を含んでるような場合では、線引きが難しいけど、なんとなくいくつかの個体群に分ければ分けられそうで「○○タイプ」とか整理されることもある。そのへん、種を分けるべきか、同じで良いか、むしろ統合かとかはDNA調べるような分子生物学的な手法が盛んになってきてから色々と分かったり、逆に混乱に拍車がかかったりしてもいる。生き物ってのはそれぐらい変わり続けて多様性に富むのがあたりまえで線引きが難しいということは、前提として念頭に置いて考えるべきではある。

 ということで、種なり亜種なりが一緒なら、あるていど形態や生態が同じ生物集団だと考えることぐらいはできそうであり、よって釣りの対象とするなら、その魚の種なり亜種なりの特徴を知り、それを対象とした釣り方を学び、そういった一般的な知識に自分の釣り場、釣り方の特性を加味して、知識を上積みして、戦略を練り試行錯誤していく必要がある。

 で、今回のネタの、本州で普通に狙えるテナガエビの仲間3種については、江戸前小もの釣り修行でもっとも得意として修練を積んだのがテナガエビだったので、思い入れもあり、首都圏在住時にテナガエビとヒラテテナガエビは釣っているので、南方系で関西以西に多いとされているミナミテナガエビは是非釣りたいと移住時考えていた。紀伊半島以南ぐらいだと普通にテナガエビ釣ってるとミナミテナガエビも混ざってくると聞いてたので、釣れると思ってたらテナガエビ自体が近所の川では釣れるほど居るところ見つけられなくて半ば諦めていた。

 ところが、鮎毛針釣りで暗くなるまで粘った帰り道、トボトボジャブジャブと川の浅瀬を帰路についていたら、ヘッドランプの明かりの中にテナガが入ってくる。その川ミナミヌマエビはワサワサいる川でその夜も抱卵雌とかがホヨホヨと泳いでたんだけど、テナガは少なくてこれまでシーバス釣ってるときとか、鮎釣りの帰途に足下とかに居ないか気にはしてきたけど、下流のテトラではたまに見るけど、それも釣りになるほどは居ないのでテナガは居ない川という認識だったけど、何匹か居るのでちょっと意外な感じがして、やや大きめのオスがいたので捕まえたくなってタモ構えてそっちに足で追い込んで確保。手にとってみて戦慄が走る。ハサミに毛があんまり生えてない。ひょっとしてと思って、歩く足の爪を確認すると明らかに短い。ミナミテナガエビだった。その場でススキの枯れ穂を竿に仕掛けをでっち上げて、川虫とミナミヌマエビむき身を餌に10匹弱釣ったところ、どれもミナミテナガエビだった

 その日の探索の結果、ミナミテナガがいるのは10mあるかどうかの狭い範囲の流れの強い側の浅瀬に限られていて、それまで反対側の流れの弱い砂底の方は何度も通っていたのに気がついてなかったという、ちょっと入渓地点を変えたことによりたまたま見つけた生息地だった。釣りってそんなもんだけど、ドンピシャの場所と時間の黄金郷のすぐ隣に不毛の砂漠が広がっていたりする。端から端まで場所と時間と状況を変えてすべてを調べ尽くすことのいかに難しいことか。あらためて思い知らされることとなった。

 テナガエビとミナミテナガエビとヒラテテナガエビの3種においてヒラテテナガエビは形態的にかなり違うので、テナガエビ釣ったことある釣り人ならすぐに判別可能だろう。その名のとおりハサミ脚(第2歩脚)がごつくて平べったい。全体的にゴツくて殻も分厚く、どこかニホンザリガニのような渓流性のザリガニを彷彿とさせる雰囲気がある。ちなみに外来種のアメリカザリガニがニホンザリガニを減少させたというのは、ほぼ嘘っぱちである。生息環境が止水や下流域の暖かい水を好むアメザリと渓流やわき水の冷水域を好むニホンザリガニでは生息地があまり重ならない。多くの人が昔は田んぼの脇の水路とかにニホンザリガニが居たと言ってるのは、冷たい湧き水を引いてるならともかく、基本的には赤く発色するまえのアメリカザリガニの幼令個体をニホンザリガニだったと思い違いしているだけである。田んぼで捕まえてきた赤くないザリガニを長期飼育していると、脱皮して大きくなっていく課程で、あるときハサミ脚が赤くなったなと思ったら次の脱皮で全身真っ赤になる。ちゃんとアメリカザリガニの長期飼育ができていればそういう勘違いはしないはずである。アメリカザリガニとの競合が起こりそうな河川の下流域や止水域では生息域がかぶるのはテナガエビやスジエビなどであり、これらには何らかの影響はあったんだろうと思う。思うけど大河川ではテナガエビの方が優勢なように思う。アメリカザリガニが問題になるのは天敵のナマズやらウナギやらも居ないような狭い水域に持ち込まれ、希少な植物やら刈り取って動植物を食い散らかすような場合だろう。ちなみに逃げ場もない水槽でアメリカザリガニとテナガエビを一緒に飼うと、テナガエビが長いリーチを活かした攻撃でアメリカザリガニを完封してしまい、アメリカザリガニ歩脚全部切られてダルマ状態にされるらしい。ハサミの強さならアメザリ有利に思えるけど攻撃できる間合いに入らせてもらえないようだ。ロングリーチを活かしたジャブとストレートでゴリゴリのインファイターを懐に入らせないアウトボクサーみたいなものか?

 で、ノーマルのテナガエビとミナミテナガエビの違いは、パッと見ただけではわからんぐらい似ている。ちょっと昔はミナミヌマエビは胸の”M”字模様がくっきりとしているのに対し、テナガエビはややグチャッと乱れるとか書かれていることが多かったけど、模様だ色だは個体差やら体色の変化やらでアテにできないことがある。今回ミナミテナガエビとしたエビたちも、M字はハッキリしていない。ていうか写真だとM字がない。これは夜間に釣ったからというのが原因と思われ、光の強い状況では保護色に効く模様をハッキリとさせていることが多くても、夜とか濁りの中では色がボヤけてることが多い。あと個体差も大きい。この程度の模様の出方で種の同定ができるとは考えにくい。肉眼で細かく見ればうっすら透けて見えるような模様は確認できるかもだけど、そんな難しいことしなくても他の見分け方を使えばいけるので、そっちを使う。

上段2匹テナガエビ、下段2匹ミナミテナガエビ
 頭の触角が生えているところの角の長さ等も同定の際の基準となるようだけど、ワシがテナガ釣りするようになったころから言われ始めて、見分けやすいので使われるようになったのが、ハサミ脚の毛の有無、歩脚の爪の長さの違いで、特に歩脚の爪の長さの違いはハサミ脚の発達していない小型個体や雌にも適応できるので、一番頼りになると思う。ただパッと見て目立つのはオスの場合ハサミ脚の毛で、今回もタモで掬った1匹目で毛の少ないハサミが目についたので、初物のミナミテナガの予感に戦慄が走ったのである。写真上段は過去釣ったテナガエビで毛が良く写ってるハサミ部分を切り取った画像で、下が当地で釣ったミナミテナガエビ2匹のハサミ。いかにテナガエビのハサミが毛深いかおわかりいただけるだろうか?

上列テナガエビ、下列ミナミテナガエビ
 で、これはミナミテナガエビだろ!って色めき立って歩脚の爪を確認する。短い、っていうか普通。ミナミテナガエビの歩脚の爪は、まあエビの爪ならこんなもんだろ、石の上這い回ったりするし、しっかり引っかけるためにある程度太くないと駄目だろうしという感じで納得できる。

 ところが、テナガエビの歩脚の爪は、上段写真の真ん中の雌の黒っぽい卵を背景に写ってるのが分かりやすいけど、鎌かっていうぐらいに細くて長い。後ほど考察するけど、なんか特殊な用途にでも使わない限りこの細長さはないと思う。

 このぐらい違うと、生物の世界に100%はなく、例えば交雑個体の可能性もないではないし、ワシが念頭においてない最初から検討対象としてない南方系の種とかが気温上昇の影響で生き残ってるとかあるかもだけど、まずミナミテナガエビで間違いないだろうと思っている。国内最大種のコンジンテナガエビとかだったりしたらそれはそれで嬉しいけどね。24センチ(半分ハサミ脚だけど)とそこそこ大型のオス個体でもハサミ脚が黒くはなくコンジンっぽくなかったのでコンジンはないだろうけどな。

 で、そんな毛だの爪の長さだのが違う種が釣れたぐらいで、なにを”戦慄”せにゃならんのだ?どうでもいいだろ、たいした違いかよ?って思うかもしれない。そう思うのは”センスオブワンダー”の欠如であり、生き物や自然の不思議や仕組みに対する興味や感動する心を欠いているといわざるを得ず。せっかく魚釣りして自然や生き物に触れる機会が多いのに、その楽しさの根源にあるものを理解できておらず、木を見て森を見ていないと指摘せざるを得ない。センスオブワンダーって言葉は今では”SFを楽しむ素養”的な意味合いで使われることが多いけど、もともとは「沈黙の春」で有名なレイチェル・カーソン先生の著書から来ていて、自然や生命の不思議を楽しむ素養というような意味があった。カーソン先生引用されまくってるから知ってるけど著書はパラパラと摘まみ読みぐらいで通して読んだことないっていうのがちょっと恥ずかしいけどね。

 種が違うと、似ている種同士でもちょっと違う。そのちょっとの違いがなぜ生じているか?っていうあたりにまで突っ込んでいけると、その違いはメチャクチャ楽しめる味わい深い違いとなる。

 今回のテナガエビ(以下「ノーマルテナガ」と書く)とミナミテナガエビの違いでいえば、前々からノーマルテナガのほうがハサミに毛が多く、脚の爪が長いってことは、河口域の葦ッパラとかにノーマルテナガは適応していて、ドロドロッちい環境で底の有機物を毛で濃し取るようにして食べてたり、葦に長い爪を引っかけて行動してたりしてるんじゃないかと思っていた。葦のある釣り場では葦の上の方に餌垂らしておくと登ってきて釣れる。っていうか底の方に餌落とすと絡んで上がらないことがある。

 で、今回釣ったついでにネットでまたお勉強してみたら、やっぱりノーマルテナガのほうが河口域に適応しているというのはあってるようで、逆にミナミテナガは中流域とかにも居るとのこと。ノーマルテナガの脚の爪の長さについては不自然なぐらい長くて、内股に折り曲げて爪の背で歩いているのは何の意味があるのか?と水槽観察から書いている人もいて、歩くときの爪の向きまで見られていなかったので、見る人は見てるもんだなと感心した。葦とか壁面とかに引っかけて登るほかに、ドロドロの底に沈まないように長い爪で重量分散させて歩いているのかも?とか考えるとまた楽しめる。

 で、重要なのはミナミテナガとノーマルテナガでは生息域が川の河口ではかぶるけど、ミナミテナガはノーマルテナガでは産卵期でもなければ居ないような中流域でも生息しているってことで、これまで紀伊半島に来てからテナガを探したのは河口域ばかりで、ミナミテナガが中流域より上にもいる可能性は考えてなかった。ノーマルテナガがグチャッと居た東京湾に流れ込む川とかでの成功体験に意識せず引っ張られてしまってたっていうお粗末。なので近所の河川でももうちょっと中上流域を探らないといけなくなってきて、イマイチ釣れていない絶不調もあり自転車積んで電車でGOとかで新規開拓するか?とか思ってたけど、そんなことやってる場合じゃなくなってきた。改めて探って居なければ居ないでそういうもんだけど、N川の上流では数は少ないけど、やっぱりミナミテナガが居て釣れたし、釣れないまでも初めて探りを入れたN川の支流で意外に大型のカワムツが多いとか、テナガに限らず発見はあって、不調で停滞気味だったのを打破して新しい展開に突っ込み始めている。

 ノーマルテナガとミナミテナガとの違いの、違いが生まれた背景、生態や進化に思いをはせるだけでも、お好きな人間なら丼飯余裕の楽しさがあるうえに、さらにその違いから釣りの戦略を立て、実際に獲物を手中に収めることができるとなれば”センスオブワンダー”は釣りをより楽しくする香辛料の役割だけでなく、”釣るための武器”の一つにさえなり得るのである。

 釣り人ならくっだらない新製品をありがたがってる暇があったら、センスオブワンダーを磨いておけって、ちょっと魚釣れないと道具ばっかり買ってることへの自戒も込めて今回テナガネタを書いてみた。

 以前、釣り人なら「新しい釣り場」の発見については、新しい天体の発見以上の価値を認めるべきと書いた。もちろん新しい釣りモノや釣り方についても同様である。今回ミナミテナガエビという新しい釣りものを見いだし、新たな釣り場を開拓できたことは、ワシ的にとても大きい意味を持つ。たとえ釣れるのがそれほど大きくもないエビで”小物”であったとしても、その楽しみは決して小さくなく、ワシにとっては天体の発見にもひけを取らない大発見であると満足している。

2025年5月20日火曜日

<重要>サンライン「クイン★スター」とサンヨーナイロン「エクストラV-500」には生分解性がありまーす

 水中等の自然環境中で、細菌など微生物の働きで分解される、いわゆる”生分解性”のあるナイロンラインについて、ワシはサイトを立ち上げた当初から推しまくっていて、っていうか、生分解性のショックリーダーを世に広めるのが大きな目的の一つでサイトを立ち上げたと言っていいぐらいである。あつかえもせん細糸を絡ませて釣り場に捨てていく弩級の輩どもは論外として、普通に釣り場にゴミを出さないように心がけている釣り人でも、どうしても根がかりしたり、魚に切られたりして環境中にラインを放出してしまうことは想定される。それがラインに生分解性があったらだいぶマシな結果になる。時間の経過で劣化してボロボロになってもマイクロプラスチックとして百年単位で環境中に残ってしまうといわれている生分解性のない素材でできたラインと比較して、速やかに生物たちの力を借りて分解されて環境中から排除されるのなら、 環境に与える影響は小さくてすむだろうことは確かだろう。

 この問題には、釣り用のナイロンラインの製造元である日本の各メーカーでも結構真面目に取り組んでいて、以前も紹介したけど元祖の東レ「フィールドメイト」も初代は性能的にいまいちで受け入れられなかったのを再度2010年代に改良版を出しているし、バリバスのモーリス「RTE」も第2世代まで開発して頑張ったし、ラインの国内工場持ってるデュエルも作ってたし、ダイワも石鯛の捨てオモリ用で売っていた。でも全部廃盤になってしまった。少なくともショックリーダーとして使用する分には、引っ張り強度、耐摩耗性共に足りなければより太いのを使えば良いだけで、多少太くて伸びがあるのは技術でカバーして使いこなすのが釣り人の”腕前”ってもんだろうと思うけど、日本の釣り人の多くが、釣り糸は単純に細くて引っ張り強度が強いのが良いぐらいの評価基準しか持っていなくて、そうじゃなければ変にマニアックに低伸度で感度が良いとかをありがたがる。これまで何度も書いてきたけどアホでしかない。だから「生分解性ショックリーダー」という魚釣るための性能的には及第点ぐらいのショボいものであっても、一番大事な釣り場に魚が沢山いることに効いてくる”環境性能”的に優れていることを正しく評価することができなかった。マヌケでお粗末で腹立たしくワシも釣り人の一人として恥ずかしいかぎりである。ラインにナニが必要かは自分がやる釣りに応じて、それぞれ適切なものや好みのモノがあるだろうけど、一般的にそこいらでシーバス釣ったり海の小もの釣りしたり川魚釣ったりでは、引っ張り強度なんて今時のナイロンラインなら十分だし、結びやすさやらトラブルの少なさ扱いやすさやらで、そこそこの太さのあるナイロンラインで、根ズレやら歯の対策にフロロのリーダーでも接続しとけば事足りる。細いPEやらエステルやらなんやら、飛距離だ感度だ小うるさいこだわりで選ぶ釣り人のどれだけが、それらの細糸の利点を引き出せているのかはなはだ疑わしい。何度でも書くけど飛距離なんて魚に接近する方法いくらでもあるので多少の差はカバーできるし、遠投してる多くの釣り人はなんにも魚が居ないところを引っ張ってる時間が長くなってるだけだったりする。ちゃんと食ってくるゾーンが分かっててそこに届かせるために投げてるか?そして感度が良いラインの向こうでは魚が感度良く釣り人の動きを感じているだろう。感度が悪くて魚が違和感覚えにくい道具立てで、分かりにくいアタリをとれるようになると「ショートバイトが多くてスレてる」とか聞いた風な言い訳をしなくてすむようになる。

 で、環境性能的に優れている生分解性のラインを釣り人の要望に応えられるぐらいに高性能化するには、まだ何段階か必要で、ラインメーカーさんの頑張りを期待するしかないと思っていたら、思わぬ方向から解決策の大きな突破口が見つかった。

 「これまで分解しないとされていた市販の釣り糸が海洋で生分解することを発見」というどうゆうことやねん???と驚愕するネットニュースが5月15日ぐらいに流れてきた。

 ワシそういう話題しか記事読まないから、ヤフー様がお勧めしてきてくれたってだけで、一般の人の目にはついてないかもなので、興味のある人はネタ元の東京大学の記者発表にリンク張ったのでご一読いただきたい。ネットの記事では、東大中心とした研究グループによる報告で、市販されているナイロン釣り糸の中に生分解性があるものが認められて、ナイロンは環境中で生分解されないとされていたこれまでの常識を覆す発見であると紹介されていた。ワシ的に衝撃的な内容だった。

 生分解性があるナイロンライン、釣具屋で以前から普通に買えていたみたいです。

 分解されるってことは劣化が早いってことでもあり、メーカー側は公表されたくない事実かもだけど、市販品のレベルの強度を新品時持っていて生分解性のナイロンラインなんて、夢の釣り糸だろそれはって話で、メーカー側は堂々と”生分解性”を謳って売って欲しいし、釣り人も釣り業界も少しでも環境負荷が減るようにそういうラインを使う方向に行かねば嘘だろうと思う。ナイロンラインを劣化するまで使い続けるような弩級の素人のドアホどもの意見は無視するべきである。もちろん生分解性があるからといって釣り場に捨てて良いわけじゃないけど、それでも釣り場環境の保全に貢献するのは間違いなさそうに思う。遊びの釣りだけじゃなくて記者発表でも触れられているように漁業にも大きく貢献する発見だろう。具体的な銘柄がなんだったのか?も知りたいし、どういう細菌とかが分解しているのか、銘柄によって違いが出るのはどういう仕組みか、もしかして昔はナイロン系とかのプラ素材を分解する生物ってほとんど居なかったけど、環境中にプラゴミがあふれたことによってプラ素材を食う生物が増えてるとかもあるのか?とか研究の続報も知りたいし、現状の研究結果もネットの紹介記事だけでは断片的でよく分からんので、東大の記者発表検索してちょっとお勉強してみた。

 銘柄はすぐに判明。お題に書いてしまってるけどサンライン「クインスター」とサンヨーナイロン「エクストラV-500」の2銘柄で顕著で、実験には色つきのを使ってたけど、キモになるのは引用すると「ナイロン6とナイロン6,6の共重合体(2種類以上の異なる単量体(モノマー)が結合してできた高分子(ポリマー))の釣り糸の中で、共重合体の比率がある範囲に入る市販の釣り糸が、海洋中で生分解性ポリマーの標準物質であるセルロースと同程度の生分解性を示すことを世界で初めて明らかにしました。」ということらしく、ストレーンのデュポン社のカローザス博士が開発した最初のナイロンであるナイロン6,6と東レとかが開発したナイロン6を混ぜた塩梅によって生分解性の違いとかが生じているようだ。2銘柄に関しては生分解性素材の代表的なセルロース(木とか紙とかもセルロース)と同じぐらいの生分解性があって、クインスターだと海底で3ヶ月で強度は20%まで劣化するとか。あと東レ「銀鱗」も先にあげた2銘柄ほどではないけど生分解性があるとのこと。

 クインスターってJ州屋とかで売ってる代表的なボビン巻きナイロンラインじゃん。っていうかワシ50LBのショックリーダーとして愛用してる。ちょっとごわついた感じの堅めのナイロンって印象で、ややフロロ寄りのナイロンと思ってなんの問題もなく使ってたけど、生分解性があるって認識なかったから、リーダーとして組んでスプールに巻きっぱなしで保管してるヤツとか劣化して強度低下してしまってるかもだから要注意だな。

 とりあえず根魚クランクに使ってる先っちょのハリスはフロロの8号だったけど、根掛かりやら切られることは極力避ける方針で生分解性はイランかもだけど、念のため手元にあった50ポンド12号を早速導入。さらにシーバス用に4号、アジのハリス用に一番細い0.6号も購入。さっき書いたようにやや堅めの印象でワシの好み的には道糸にはどうかな?と思うけど、色も道糸向きの黄色とかもあるし、ハリスで使ってみていけそうなら導入したい。この際好みだなんだは無視すべきか?少なくともハリスでクインスターの商品ラインナップに適切な太さがある分は、どうしてもシーガーのフロロカーボンハリスに頼りたいって場合を除いて全部クインスターにしていこうと思っている。過去の生分解性ナイロンリーダーは伸びまくりでさすがに道糸には使いにくそうだったけど、クインスターとか普通に道糸に使われてる糸だろうし、好みは別として使って使えないことはなさげで、生分解性ナイロンの釣り糸としての性能は、”リーダーとしてはなんとか使いどころがある”って程度から、いきなり飛躍して”道糸でも普通に使えまっせ”ってレベルに革命的に向上したと言えるるだろう。

 ただ不思議なのは、なんでナイロン6にもナイロン6,6にも生分解性なんてないのに、その共重合体には生分解性があるのかっていう仕組みとか、いったいどんな細菌とかが分解しているのかとかとか、そのへんはまだ分かってないようなので、引き続きの研究と報告に期待したい。

 なんというか、分かってしまえば「もうできてるじゃん」っていう話だけど、典型的な”コロンブスの卵”で、最初に見つけたその着眼点、分析力が素晴らしいと手放しで賞賛したい。さすがは日本の最高学府”東京大学”って他も参加してるにしても思ったところ。また通常ならこういうの「プレスリリース」って横文字使いたがるところだけど「記者発表」って漢字表記なのが頭良さげ。まあ実際頭いい人が入る大学だろうから当然か。横文字やらローマ字略称やらでさも己が賢そうに見えるように粉飾してるドアホどもは、頭が良いから分かりやすい言葉を選ぶことができるってのを肝に銘じよ。

 クインスターとかの安いボビン巻きナイロンラインの性能を馬鹿にして「オレ様はそんな低レベルな道具は使わない」とか言っちゃうような弩級のバカは釣りなどやめてしまえ。クインスターやらが生分解性という環境性能で再評価されるようになったら、そりゃ各社、1から生分解性ナイロン開発するのに比べたら、条件に合致させて高性能化するのは、現状で既に釣り糸として売り物レベルの性能があるのでわけないはずである。今、クインスターなりエクストラVなりを買って、その開発を後押ししてやらねば、ただでさえ釣り糸のゴミは文字通り収拾つかないぐらいの”日本の釣り場の現実”があるので、こんなチャンスを見逃すようなマヌケに釣れる魚などろくにいないのは明白。なので、とっとと釣り具を中古屋にでも売ってしまって撤退しておけと自称達人でカリスマのワシャ親切にも助言してやるのじゃ。

 今後は生分解性のナイロンラインを使いこなせなければ、時代遅れのヘッタクソということになるだろう。


<注>いつも週末に記事あげてますが、今回はネタの重要性に鑑み、なるべく当ブログのトップに出る期間を長くして多くの人に伝わるように早出ししています。なので今週末24日(土)に更新は無しの予定です。あしからずご了承ください。また、このクソ重要なネタに触れないような雑誌、映像番組等の釣りメディアがあれば、およそ役に立つような情報など期待できないので切った方が良い釣りに繋がるかと存じます。

2025年5月17日土曜日

大事なモノにはやっぱり予備が必要だ

使用中のウエダ(上)、アグリースティック(下)
  根魚クランク、実弾は良い感じに補充できたけど、弾が補充できたら、銃器そのものの方もしっかり準備しておきたいってのが、病気の時の熱暴走って感じで、去年やってたし竿もリールもあるヤンコビッチ、って話だし、昨年安く手に入れて大活躍してくれたシェイクスピア「アグリースティックGX2 USCA662MH」になんの不満もないんだけど、これが大事なモノには予備が必要だと考える性格なので、同じような竿がもういっちょ欲しい。って、もともとアグリースティックもウエダ「プロ4ピッチンスティック」の代打的に入れた竿なので、ウエダを予備にすりゃ良いといえば良いはずである。でも理屈じゃないのが病気の怖いところで、とにかくもっと予備がほしかったの。アタイ病気が憎いッ!

ソルトストライカーとFVR
 まあ、アグリースティックのGX2シリーズは現行モデルなのでもう一本買えば良いんだけど、正規輸入がないので海外通販だと今日日円も安いのでエラい割高になる。狙いの魚の大きさ的には一応40,50を想定しているんだけど、いきなりデカいのが来てもおかしくないから、軽いのが売りで薄っぺらい国産の現行モデルはまったく強度的に信用できないので買う気はない。となると、国内中古市場で手に入りそうなのは古いダイコーとかの丈夫な時代の竿とかか、やっぱり米国モノってなる。米国モノなら現行モデルでもそこまで強度に問題はないだろうから及第点か。ということで中古で良さげなのはないかと探って、とりあえずわりと最近のフェンウィックの「FVR66CMH-2J」というのが送料入れて6千円チョイだったので確保。FVRというのはフェンウィックの中では下級グレードの、今時5万とかの竿が珍しくない中で定価2万円ぐらいの竿のようで、キンキンの高弾性じゃない低弾性カーボン使ってるところもポイント高い。「イーグル」シリーズの昔からフェンウィックの安いグレードの竿は良いと思うので期待できる。パワーはミディアムヘビーで8LB~20LBライン対応と、今使ってるアグリースティックGX2が10~25LBライン対応なので似たような堅さ。実際に手にしてみると、パワーはちょうど良い感じ。ただアグリースティックがグラスソリッドという特殊な竿先であからさまにグニャッと食い込み良さそうなのに対して、全体的に張りがあってそこはややアタリ弾かないか?という懸念はある。あるけど40からある根魚はガコンと思いっきり食ってくるので気にせんで良いか?まあ及第点かなと思うんだけど、もっと良いのは無いかと探して、送料込みで6750円で出てたカベラス「ソルトストライカー ISC703-3MHA」というのも確保してみた。カベラスが”ソルト”って売ってるぐらいで、ガイドも全部ダブルフットで丈夫だろうし、7フィートの長さはタメも効きそうで良いし、3本継ぎで携行が楽なのは、もし今後他の場所でやるとかになったときに便利。これも堅さ的には先ほどのフェンウィックと似たような感じの10~20LBライン対応。まあこれも及第点はあげてよさそう。

 ただ、クソデカいのが来たときに及第点の竿でどうにかなるのか?と考えると、最悪竿真っ直ぐ魚に向けて綱引きでなんとかするって裏技はあるので良いといえば良いんだけど、結局アグリースティックの”クソ丈夫さ”を代替する竿ってなかなか無いのが実際で、そうなってくると竿2本もアホみたいに買ってしまったけど、緊急時の予備竿としては機能はするにせよ、やっぱりアグリースティックが使いたいってのがある。そこはもう理屈じゃなくて、好みの問題でどうしようもない話である。今の竿で結果も出てるから、”釣れてる道具は変えない”っていうのも鉄則だと思う。となると仕方ない、一時1ドル158円とかまで円安進んでたけど、戻して140円台前半まで来てたし”買うか迷った釣り具は買っておけ”はこれまた鉄則だし買うか。ということになった。やっぱりアタイ同じ竿の予備が欲しいノ。

 で買おうとしたらこれが意外に難航。まずは今使ってるパソコンだと、パソコン側のか向こうのせいか分からんけど、バスプロショップスのサイトとの接続に不具合が生じる。購入手続きまで行かず途中でエラー画面になってしまい戻っても初期画面まで表示されないお手上げ状態になる。こちらのパソコンのセキュリティーとかが邪魔してるのかなと、古い方のパソコン立ち上げて、そちらなら今の住所になってからも利用してるので大丈夫だろうと思ったら、今度は購入確認画面まで行くんだけど、送料が無料となって、なんか変だなと思いつつも決済しようとするとそこでエラーメッセージが出てどうしようもなくなる。海外発送できなくなったか?仕方ないのであとは代行業者とか探すか?と思ったけど、代行業者は米国内国内送料と国際送料が二重にかかった上で手数料とるからさすがに馬鹿臭いぐらい高くお手上げで、こりゃ諦めるか?と思ったけど、ふと思って輸入してるショップとかないかなと検索掛けてみたら、ヤ○ーショッピングに店出してるところが送料込み13800円で売ってるのを見つけた。バスプロショップスで買うと60ドル弱の本体価格に4千円からの送料は掛かってくるはずで1万2千円がところかかる。とすれば2千円ぐらいの手数料なら許容範囲かとポチッといきました。なければ買わずに済むモノを「「ある」のがいけない!!!「ある」のがいけない!!!!(byもちづきさん)」。4万も5万もする竿があたりまえになった今時とはいえ、アグリースティックに1万4千円!”世界一の安竿”も出世したモノである。まあ金で解決できる問題は金で済ませばいいやという感じで無事確保して症状は治まりつつある。ガイドが一個曲がってたり、グリップのビニールカバーを貫通して傷が付いてたり、相変わらず米国通販の雑さにはまいるけど、ガイドは指で戻せばなんとかなったし、グリップは見なかったことにしておく。ヤレヤレだぜ。しかし、物価高騰のおり食費が以前なら月1万円を切ることさえあったのに今じゃ2万円ぐらいにはなっていて、切り詰めて半額の菓子パン買うかどうかためらうぐらいなのに釣り具には躊躇がないワシ。米が5キロ5000円とかなのは購入時毎回苦虫を噛みつぶすような渋い顔をせざるを得ないのに、竿の取り寄せの手数料2千円ぐらいは許容範囲と思ってしまう不条理。さらに言うなら安竿とはいえ不要不急の竿を3本も買ってしまってる。まあ米の値段始め物価高に関しては米が国内で自給できなくなるとかしょうもないことになっても馬鹿臭いので米農家が儲けられる程度の価格は容認せねばならんということだろうとは思う。けど、もうちょっと安くして欲しい。米農家もJA(旧全農)もそんなに高い値段で売ってないって話も目にするし、値段つり上げてる輩どもには”打ち壊し”ぶちかましたい気分。

 でもって、確保してもしばらく出番はない予備竿たちだけど、仕舞っておくのにフッ素系コート剤のボナンザ塗ってから保管しておくかと、ボナンザスプレー出してきたら間の悪いことプスプスッと使い切ってしまった。でもって前々からスプレー方式はスプールのラインに吹くには都合が良いけど、竿とかに吹くと多くが竿にかからず下に抜けてしまってもったいないと思ってて、確かボナンザってシートに含ませたウェットティッシュみたいなタイプもあったよなと、ア○ゾンで探ったら、シートタイプもあったけどさらにお値打ち感のある原液タイプ50グラム入りがあったので、そっちを購入。スプレーは50mlとなってるけどガスと溶媒分が多そうだから値段同じぐらいなので原液タイプの方がお得だろう。そしてボロ切れに染ませて塗り塗りふきふきして良い塩梅なんだけど、なんかこのパッケージの配色見覚えがあるんだよな、と気になってなんだったけかな?と記憶をまさぐって「あれだ!」と想い出して、蔵から該当するブツをほじくり出してみた。ザウルス時代のバルサ50のパッケージがそっくり。ボナンザは古くからあるので、真似したとしたらおそらくザウルスの方だろうけど、なぜこの配色を真似する必要があったのかは謎で、そもそも真似したのか偶然の一致なのかも分からん。どなたかそのへんご存じの方がおられたらご教授願います。

 で、せっかく50グラムも手に入ったので、以前から懸案事項だった、蔵で保管してる竿のうち袋入りの竿の手入れをやっつける。当然保管する前にも手入れしてから保管してはいる。けど、リールでちょっとやらかしたんだけど、塩水で使った道具を持ち帰るときに袋に入れて持ち帰ると袋に塩水が付着してしまい、帰宅後竿やリールを真水で洗って塩抜きして乾かしてから袋に入れても、袋が塩気にまみれてるので袋の中で塩にやられる、ということが起きると判明。これを避けるためにOニーサンはゴルフクラブ用だそうだけどメッシュ状の筒に竿を入れて持ち帰って筒ごと竿を水洗いして塩抜きしてるそうである。というわけで袋を洗濯して塩抜きして、竿も真水で丁寧に洗って乾燥させてからボナンザで拭いてやって改めて保管、という工程を5本づつぐらいまとめて作業してやっつけた。我が家にゃ現時点で121本の竿があるけど、中古で買った竿で袋無しとか、そもそも元から竿袋など付いてこない安竿とかも多いし、塩水での使用がない渓流竿とかもあるのでそこまでの数はないんだけど、それでも30本からの竿を改めて手入れし直してっていうのは面倒くさかった。まあでもボナンザ原液で買ったかいはあったというモノである。皆様、釣り場から持ち帰る際に塩水付いた道具は袋に入れないように、もしくは袋も塩抜きするように気をつけてください。

 なんにせよ、竿は消耗品のたぐいだと思うので、今後も入手が面倒くさいアグリースティックやらのアメ竿を除くと、ワシ好みの丈夫な竿が日本で新たに売られることは期待できないので、今蔵にある竿達は良い状態で保管し、必要となったらすぐ使えるように準備おさおさ怠りなくしておきたいものである。

2025年5月10日土曜日

予備弾倉は豊富に在庫しておかねばならぬ

  冬のカマスシーズンが終わって、なんとかオカズのアジは確保できていたけど、急ぎ足の春は何が何だかよく分からん感じで、ここ数年恒例のシーバスの不調、読み切れん泳がせと根魚、ちょっと良かったのは単発のマゴチぐらいでこの春は釣れてなかったんじゃ。そんな春の不釣をうけて、症状が出たのがフライリール方面だけだったと思ったかい?そんんなわきゃあない。って話で他にも症状出てました。

 まあ、今年もシーバスは期待薄いので、そうなると期待したいのは昨年良い思いした根魚クランクで、去年良かったからと言って今年も良いと思うなよ!って話ではあるけど、すがるような気持ちで、南方系で夏には港に入ってるのは去年の場合確認できていたハタ系が、春にいつ頃入ってくるか、今か今かとボウズ食らいながら待ち続けてたので、どうしてもそっち方面の妄想がふくらみがちで、症状は主に根魚クランク方面で出まくっていた。

上列60、下列45
 というわけで”ルアー図鑑うすしお味”第79弾はディープクランクで行っておこう。以前にも課題として「サイレントモデル」「サスペンドモデル」の導入と言うことは考えていると書いたところだけど、太いリーダー背負って海水で3mぐらい潜ってサスペンドというのはなかなか無いということで、フックに半田線巻いて調整するってのが妥当かなという今のところの整理だったけど、ラトル無しのサイレントモデルは、元々バルサ製で強度面の不安のあるバグリー「DB3」を代替できる丈夫なルアーが必要ということで、一応ボーマーブランドの「ファットフリーシャッドサイレント」が良さそうかなと、すでにいくつか確保済みだった。で、ツーテンの虎ファンさんにもらったサンシャインフィッシング「ベクトロン60」はネット情報では淡水で最大潜行3mぐらいだろうとされていたんだけど、これが実際に釣り場で根魚クランクタックルの8号リーダーとかで投げても3m強は潜ってくれて、一方ファットフリーサイレントの方は4m以上潜りそうで、そうなると使い分け可能であり、かつ主戦場の水深3mラインで使いやすいのはベクトロン60ということで、買い取り強化月間が始まった。そしてベクトロンには45と30という弟分がいて、30はまだ形状が違うので分かるけど、45は写真ではイマイチ分からず、60のつもりで買ったら45というのが結構あった。ただ、45も3m弱ぐらいは潜ってくれるので、潮位低い日やら根の上とか使いどころはありそうで、同時に買い取り強化月間を進めた結果が写真の有様である。ベクトロンはサンシャインフィッシングというブランドで出てた最後の方の名前で、昔の名前は「トリプルディープクランク」の10、15、20とのことで、ブランドはアングラーズプライド→クランクベイトコーポレーション→ルーハージェンセンときてサンシャインフィッシングと移り変わるって経緯だったのかな?サンシャインフィッシングは日本の輸入元のブランドのようでもあり、変わった経歴のルアーである。ルーハー時代とみられる個体もいくつか混じっている。早速ハタ系も釣れて、バルサ製で中身がみっちり詰まったDB3と完全に互換性があるかというとそうではないだろうけど、基本ラトル入りが多いディープクランクにおいて、ラトル無しは変化をつけるために切る札としては充分機能してくれそうな感触で気に入って一軍起用しているところ。良い仕事してくれそうな予感がある。弾薬は充分補給できた。

下リップサイズ比較、DD22、マッドペッパーマグナム、G23、G25
 できたんだけど、勢いのついた暴走機関車はブレーキぶっ壊れてるのかハナからついてなかったのか、止まるわきゃない。なんか手札として切れる、ちょっと毛色の変わったディープクランクはいねガ、3mぐらい潜る子はいねガ~、とクレイジーサイコナマハゲ状態でネットの海をさまよって、そういえば冬に深場狙う用に候補として買ったアーボガスト「マッドバグ」は個性的で、その時買ったG25は1oz級のデカクランクで4mぐらいは潜ったように思ったのでちょっと潜りすぎかもだったけど、アーボガストブランドお得意のサイズ展開しまくりでパンフィッシュサイズからマスキーサイズまであったはずで、ちょうど良い潜り具合のあるだろう?と、調べてみたらG27が7/8oz、G23が1と3/16ozでどちらも11f(約3.35m)と良さげなカタログスペック上の潜行深度。ただ現在プラドコ社傘下のアーボガストブランドではマッドバグ生産されていないようで、中古と売れ残り在庫品をネットで探し回ったらどうにかクソデカいG23が入手できた。まあ、コイツの役割的には、ド派手にアピール力で勝負なのでデカいのは悪くない。動き的には今時のディープダイバーなら適度にロールを伴って腰を振る感じで水流受け流して巻きもそれなりに軽くという感じなんだろうけど、コイツは試し投げしてみると、まったくと言ってよいほどロールを伴わない激しい腰振りで、フラットフィッシュのようにつんのめるような感じでガコガコ暴れる。といえば分かってもらえるだろうか?普通のディープクランクとは明らかに違う系統の動き。ただ、G23はG25とボディサイズほぼ一緒で、G25もたいがいだけど更に上行くお好み焼きのコテか?っていうぐらいの巨大な金属リップが搭載されているにもかかわらず、それが潜行深度を稼ぐために機能してないようであまり潜らない。デカいリップはむしろ暴れさせる方向に効いているような感じ。G25はそこまで強烈な動きではなく、まあ金属リップの重さで振り子運動してるがごとき激しい動きではあるけど、多少のロールも伴って比較的普通の動き?で、潜行深度もユックリ目に巻くと3m前後は狙えそうだし、リップのリグもガチャガチャいうだろうしラトルも入ってるしで、G23と比較すればおとなしいといっても食ってくるヤツがいれば一ッ発で勝負決まりそうな十分なアピール力なので切る札としては悪くなさそうで合格。あと余談だけどこの手の重い金属リップのルアーって竿立ててユックリ水面引きする小技があって、なんかそういう使い方が流行ったせいで、ティムコ「クランキンダーター」が再販されたとかなんとか。

 しっかしこういう古いアメルアのデザインの良さはなんなんだろうね。同じタイプの先行するルアーとして、ホッパーストッパー「ホッパーストッパー」とかボーマー「ボマー」とかの金属リップのルアーがあったんだろうけど、尻の方に目が付いて見事にザリガニっぽい表情が出て、かつ出来損ないのフォークみたいなリップの形状も、底を小突いて音を立てたり障害物回避したりと機能的にできている。後発でパクリといえばパクリなんだろうけど本家の劣化版にはなってない。同じザリガニルアーとしてレーベル「クローフィッシュ」シリーズやバグリー「クレイフィッシュ」の本物そっくり感も悪くはないけど、マッドバグの方がデザイナーが仕事してる気がする。いわんや今時の日本の「小魚そっくり」ルアーの陳腐さとは雲泥の差。マッド(泥)だけに。今気づいたけど、レーベルとバグリーとアーボガストが同じザリガニでも、クローフィッシュ(爪魚)、クレイフィッシュ(粘土魚)、マッドバグ(泥虫)と違うザリガニの呼称を使ってるのは差別化とか商標権の関係とかあったのかも、などと思ったり思わなかったり。単なる産地(メーカー所在地)での呼称の違いか?

 なんにせよ、良い感じに実弾補充できて、ベクトロンは一軍ローテで活躍してくれるだろうし、マドバグG25も切る札としては面白い札。ルアーは準備万端、あとは魚が接岸してくれるかどうかで、こればっかりはやってみないと分からない。マメに釣り場に立って竿を振っておこう。という方針はいつもと同じ。数が釣れるような魚じゃないので、年間通じてポロポロッとなんぼかでも釣れてくれれば帳尻があう。ドカンと良いのが来てくれればなおのこと良しで、そんな甘くはないんだろうけど、そういう可能性がある釣り場なので油断せず釣りたい。